心脈管系;心臓血管系;心血管系;循環系 Systema cardiovasculare
心血管系は、身体内部における「物質運搬の交通網」です。血管系とリンパ系に分類されます。これらの管系の中を通って、物質が身体の一部から他の部分に運ばれるため、心血管系は循環系とも呼ばれます。心臓は、体液循環の原動力となります。
概要(機能と全体像)
心脈管系(cardiovascular system / circulatory system)は、心臓と血管(動脈・毛細血管・静脈)からなる閉鎖循環を基本として、全身の組織灌流(perfusion)と物質交換を担う。主要機能は (1) 酸素・栄養の供給、(2) 二酸化炭素・代謝産物の回収、(3) ホルモン・サイトカインなど情報分子の輸送、(4) 体温調節(皮膚血流の調節)、(5) 免疫(白血球輸送)と止血である(Standring, 2021;Hall, 2021)。
循環は大きく、**体循環(systemic circulation)と肺循環(pulmonary circulation)**に分けられる。体循環は左心系→大動脈→末梢→大静脈→右心系、肺循環は右心系→肺動脈→肺毛細血管→肺静脈→左心系という系列を形成する(Moore et al., 2023)。
解剖(心臓・血管の構造)
心臓(Cor)
- 位置:胸郭内の中縦隔(middle mediastinum)にあり、心尖(apex)は一般に左第5肋間・鎖骨中線付近へ向く(Standring, 2021)。
- 被膜と腔:線維性心膜(fibrous pericardium)と漿膜性心膜(serous pericardium:壁側板と臓側板=心外膜)に包まれ、心膜腔(pericardial cavity)を介する(Moore et al., 2023)。
- 壁の層:心内膜(endocardium)→心筋(myocardium)→心外膜(epicardium)。心筋は左室で最も厚く、体循環に必要な高圧を生む(Hall, 2021)。
- 内腔と弁:右房・右室・左房・左室。房室弁(右:三尖弁、左:僧帽弁)と半月弁(肺動脈弁・大動脈弁)が一方向流を保証する(Standring, 2021)。
冠循環(Coronary circulation)
- 冠動脈:右冠動脈(RCA)と左冠動脈(LCA:前下行枝 LAD と回旋枝 LCx)に大別され、心筋酸素需要に対応する(Standring, 2021)。
- 優位性(dominance):後下行枝(PDA)をRCAが出す右優位が多いが変異がある。虚血領域推定やPCI戦略で重要(Fuster et al., 2022)。
- 冠静脈:大心静脈などが冠静脈洞(coronary sinus)へ集まり右房へ還流する(Standring, 2021)。
動脈系・毛細血管・静脈系(概念整理)
- 動脈:弾性動脈(大動脈など)→筋性動脈→細動脈。細動脈は末梢抵抗の主座で、血圧と臓器血流分配を規定する(Hall, 2021)。
- 毛細血管:連続型・有窓型・洞様(sinusoid)などに分類され、組織ごとに透過性が異なる。交換(拡散・濾過・再吸収)の主舞台(Junqueira, 2019)。
- 静脈:容量血管(capacitance vessels)として血液を貯留し、静脈還流は筋ポンプ・呼吸ポンプ・静脈弁に依存する(Hall, 2021)。
血管壁の層構造(浅層→深層)