

副腎の上縁(margo superior glandulae suprarenalis)は、副腎の最上部を形成する境界であり、腎臓の上極付近で横隔膜に接する部位を指す(Standring, 2021)→この縁は副腎の三次元的な形態を規定する重要な解剖学的指標となる。副腎は左右で形態が異なり、右副腎は三角錐状で上縁は比較的鋭角を呈するのに対し、左副腎は半月状で上縁はより丸みを帯びた形状を示す(Gray, 2020)→この形態的差異は周囲臓器との位置関係、特に肝臓と脾臓の配置に起因する。
副腎の上縁は副腎動脈の主要な進入部位の一つであり、上副腎動脈(arteria suprarenalis superior)が横隔膜動脈から分岐してこの領域に到達する(Netter, 2019)→この血管は副腎皮質と髄質の両方に栄養を供給し、豊富な血管網を形成する。副腎静脈の走行も上縁付近で重要であり、右副腎静脈は短く下大静脈に直接流入するのに対し、左副腎静脈はより長く左腎静脈に合流する(Moore et al., 2018)→この解剖学的相違は外科的アプローチにおいて重要な考慮事項となる。
副腎の上縁周囲には腹腔神経叢からの交感神経線維が豊富に分布し、副腎髄質へのコリン作動性神経支配を提供する(Standring, 2021)→この神経支配はカテコールアミン分泌の調節に不可欠であり、ストレス応答における副腎の役割を支える。上縁付近の結合組織には副腎被膜が発達しており、副腎の構造的完全性を維持すると同時に周囲組織との境界を形成する(Gray, 2020)→被膜の肥厚や不整は病理学的変化の指標となりうる。
副腎の上縁はCTやMRIにおける副腎の同定と評価の重要な解剖学的指標である(Moore et al., 2018)→特に副腎腫瘍、過形成、出血などの病態において上縁の形態変化や周囲組織との関係性の評価が診断に寄与する。副腎摘出術(adrenalectomy)においては、上縁の血管解剖の理解が出血リスクの低減と安全な手術操作に必須である(Netter, 2019)→腹腔鏡下アプローチでは上縁の視認性が手術の難易度を左右する要因となる。褐色細胞腫やクッシング症候群などの機能性腫瘍では、上縁を含む副腎全体の詳細な評価が術前計画において重要である(Standring, 2021)→画像上の上縁の変位や不明瞭化は腫瘍の浸潤性増殖を示唆する所見となりうる。