腎面(腎上体の)Facies renalis

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J0775 (右側の副腎:前方からの図)

解剖学的特徴

腎上体(副腎)の腎面は、腎臓に接する凹状の表面を指し、副腎の下面または底面(basis)に相当します(Moore et al., 2018)。この面は腎臓の上極に密接に位置し、疎性結合組織によって腎臓と結合しています(Standring, 2020)。右副腎の腎面は三角形状を呈し、左副腎の腎面は半月状の形態を示すという形態学的差異が認められます(Gray et al., 2020)。

腎面の表面は不規則な凹面形状をしており、この形状は腎臓上極の凸面形状と相補的な関係にあります(Netter, 2019)。副腎被膜と腎被膜の間には薄い脂肪層が介在し、両臓器の可動性を一定程度保持しています(Moore et al., 2018)。組織学的には、腎面の副腎皮質は球状帯、束状帯、網状帯の三層構造を維持しており、腎髄質に接する網状帯ではカテコールアミン産生細胞との相互作用が観察されます(Boron and Boulpaep, 2017)。

臨床的意義

副腎と腎臓の密接な解剖学的関係は、複数の臨床的意義を有します。第一に、腎細胞癌などの腎腫瘍が進行すると、腎面を介して副腎に直接浸潤する可能性があり、これは病期分類および治療方針決定に重要な影響を与えます(Kumar et al., 2021)。腎腫瘍のT3a分類では副腎への直接浸潤が含まれ、この場合は腎摘出術に加えて副腎摘出術が必要となります(Netter, 2019)。

画像診断においては、CT、MRI、超音波検査で副腎と腎臓の境界を正確に評価することが不可欠です(Boron and Boulpaep, 2017)。特に造影CTでは、副腎腫瘍と腎腫瘍の鑑別、両臓器間の脂肪層の保持状況の確認が重要な診断ポイントとなります(Standring, 2020)。副腎腫瘍、特に褐色細胞腫や副腎皮質癌が増大すると、腎面を介して腎臓を圧迫し、腎血流障害や水腎症を引き起こし、二次性高血圧や腎機能障害を誘発する可能性があります(Kumar et al., 2021)。

外科的観点からは、副腎摘出術の際に腎面の剥離が必要となりますが、疎性結合組織による結合のため、通常は比較的容易に剥離可能です(Moore et al., 2018)。ただし、炎症性変化や悪性腫瘍の浸潤がある場合は剥離が困難となり、腎損傷のリスクが増大します(Netter, 2019)。

参考文献

東洋医学との関連性

腎上体(副腎)の腎面は、東洋医学における「腎」の概念と密接に関連しています。東洋医学では、副腎は「腎」の一部として理解され、生命エネルギーの根源である「腎気」の貯蔵と調節に重要な役割を果たすと考えられています(矢野, 2018)。