右三角間膜(肝臓の)Ligamentum triangulare dextrum hepatis

解剖学的特徴

右三角間膜は、肝臓の右葉と横隔膜をつなぐ三角状の腹膜ヒダであり、肝冠状間膜の右端に位置します(Standring, 2020)。この靭帯は腹膜の二重層からなり、肝臓の裏面(後面)の右側と横隔膜の間を連結しています。解剖学的には、肝冠状間膜が右外側に移行する部分に形成され、肝臓の右葉を横隔膜に固定する役割を果たしています。

発生学と微細構造

発生学的には、胎児期に後腹膜と肝臓の発達過程で形成されます(Moore et al., 2019)。右三角間膜の内部には疎性結合組織が存在し、小血管や神経が通過することがあります。特に肝臓の静脈流出路である肝静脈の一部が近接して走行しています。組織学的検討によれば、この靭帯内には弾性線維も含まれており、肝臓の可動性を調整する役割も担っているとされています(Nagata et al., 2017)。

臨床的意義

臨床的意義としては、肝臓手術(特に肝右葉切除術)において、右三角間膜の離断は重要な手術ステップとなります(Clavien et al., 2022)。また、腹腔鏡下手術での解剖学的ランドマークとしても認識されています。外傷性肝損傷の際には、右三角間膜の破綻により肝臓の可動性が増し、さらなる損傷を引き起こす可能性があります(Ahmed and Venkatesh, 2021)。画像診断においては、CT・MRIで肝臓と横隔膜の境界部に認められる線状構造物として同定されることがあります(Catalano et al., 2018)。また、近年の研究では、右三角間膜の解剖学的バリエーションが手術アプローチに影響を与える可能性も指摘されています(Kawaguchi et al., 2023)。

参考文献

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J0708 (腹膜の折り返し部分と肝臓:前方からの図)

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J0709 (腹膜の折り返し部分と肝臓:上方からの図)