腸間膜

腸間膜は、腸管が腹壁から離れている場合に存在し、腹膜はその部位の腹壁を離れて腸管の表面に達し、これを包んだ後、再び腹壁に戻ります。このため、後腹壁と腸管の間に往復する2枚の腹膜が合わさった膜が生じ、大動脈と腸管の連絡路を提供します。この2枚の膜を腸間膜(広義)または総背側腸間膜と呼び、部位によって胃間膜、腸間膜(狭義)、結腸間膜などに区分されます。 ①胃間膜には、背面だけでなく腹面にも膜があります。 ②腸間膜は、小腸間膜とも呼ばれ、空腸と回腸に付属し、その基部である腸間膜根は第2腰椎の左側から右腸骨窩に斜めに走り、わずかに約15cmの長さしかありません。ここで生じた腹膜は、しだいに複雑なヒダを形成し、小腸への付着縁では数メートルの長さになります。 ③結腸間膜:発声の始め結腸前部にわたって存在するが、上行結腸間膜と下行結腸間膜は後壁腹側膜と癒着してしまうので、横行結腸とS状結腸だけに間膜が遺残する。横行結腸間膜は、その基部が第2腰椎高さで膵下縁を横断し、大網後葉と付着して網嚢の底部を形成します。S状結腸間膜は、腹腔の左下部にあり、その逆V字形をなします。 なお、盲腸には間膜がありませんが、虫垂は回腸終末部と連絡するヒダを有し、それを虫垂間膜と呼びます。

日本人のからだ(村上 弦 2000)によると

腸間膜

通常、腸間膜根は左上から脊柱を越えて右下に斜走する(53%)。しかし、しばしば垂直に近い走行を示す(35%)こともあり、時には横走する(7%)こともある。稀に下に凸のV字型や右に凸の半円型、右上から脊柱を越えて左下に斜走するなどの変異が見られる(鈴木,1931)。

西山(1955)は、肝十二指腸間膜、盲腸の後腹膜癒着、S状結腸間膜を長さと厚さから分類し、その固定の強弱を論じています。

腸間膜の嚢腫は日本で147例の報告があり、成人では偶然発見されることが多い。大網嚢腫は腸間膜嚢腫の中ではまれで、胃大網動脈が栄養を提供する。大網嚢腫は特に無症状で経過するとされています(石和ら,1996)。