尿生殖部の筋 Musculi regionis urogenitalis

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J0804 (男性の尿生殖三角筋:下方からの図)

尿生殖部の筋は、骨盤底を構成する重要な筋群で、骨盤隔膜(肛門挙筋と尾骨筋)と尿生殖隔膜に分類されます(Drake et al., 2020)。これらの筋は骨盤内臓器の支持、排尿・排便・性機能の調節に不可欠な役割を果たしています(Standring, 2021)。

解剖学的構成

尿生殖部の筋群は、会陰浅層と深層に配置され、尿生殖三角を形成します(Moore et al., 2018)。会陰浅層は会陰筋膜と尿生殖隔膜の間に位置し、深層は尿生殖隔膜内に含まれます(Netter, 2019)。これらの筋群は陰部神経(S2-S4)の支配を受け、骨盤底の機能的統合に寄与しています(Standring, 2021)。

主要筋群

球海綿体筋(M. bulbospongiosus)

球海綿体筋は尿生殖部の最も表層に位置する対をなす筋です。男性では会陰体と尿道球周囲から起始し、陰茎海綿体白膜に付着します(Drake et al., 2020)。この筋は射精時に尿道球内の精液を尿道へ押し出す役割を担い、勃起の維持にも関与します(Moore et al., 2018)。女性では膣口の両側から起始し、膣前庭球を覆いながら陰核体へと走行します。膣入口部の締め付けと、排尿後・性交時の潤滑液排出を助けます(Standring, 2021)。

座骨海綿体筋(M. ischiocavernosus)

座骨海綿体筋は座骨結節の内側縁から起始し、男性では陰茎海綿体の脚部、女性では陰核海綿体の脚部に付着します(Netter, 2019)。この筋の収縮は陰茎/陰核海綿体からの静脈還流を制限し、勃起状態の維持と硬度の増強に寄与します(Shafik et al., 2008)。臨床的には、勃起機能障害の評価において、この筋の機能が検討されることがあります(Dean and Lue, 2005)。

会陰横筋

表層会陰横筋(M. transversus perinei superficialis)は坐骨結節から内側へ走行し、会陰体で対側の筋と合流します(Drake et al., 2020)。この筋は会陰体の安定化に寄与し、骨盤底全体の構造的完全性を保ちます(Standring, 2021)。

深層会陰横筋(M. transversus perinei profundus)は尿生殖隔膜の主要構成要素で、坐骨恥骨枝の間を横走し、尿道を取り囲みます(Moore et al., 2018)。この筋は骨盤底の深層支持機構として機能し、尿道の解剖学的位置を維持します(DeLancey, 2019)。

尿道括約筋(M. sphincter urethrae)

尿道括約筋は尿道膜様部を取り囲む輪状筋で、排尿の随意的制御に中心的役割を果たします(Gosling et al., 2008)。この筋は横紋筋線維から構成され、陰部神経の支配を受けます(Standring, 2021)。骨盤手術、特に前立腺全摘除術や分娩時の損傷により、この筋の機能不全が生じると腹圧性尿失禁を引き起こします(Abrams et al., 2017)。

神経支配と血管供給

尿生殖部の筋群はすべて陰部神経(N. pudendus, S2-S4)の会陰枝により支配されます(Drake et al., 2020)。血液供給は主に内陰部動脈の枝、特に会陰動脈と尿道球動脈から受けます(Moore et al., 2018)。静脈還流は同名の静脈を経由し、内陰部静脈系へ流入します(Netter, 2019)。

臨床的意義

骨盤底機能障害