外尿道口 Ostium urethrae externum

J773.png

J0773 (女性の膀胱と尿路、膀胱は収縮:尿道を前方から開いている図)

J787.png

J0787 (男性の骨盤臓器の正中矢状断:左側からの右半分の図)

J788.png

J0788 (陰茎、球海綿体筋および筋膜と皮膚の一部を除去:下方からの図)

外尿道口(ostium urethrae externum)は、尿道の末端開口部であり、膀胱から体外へ尿を排出する最終的な出口として機能します。この構造は男性と女性で顕著な解剖学的差異を示し、それぞれ特有の臨床的意義を持ちます(Standring, 2021)。

解剖学的構造

男性の外尿道口

男性において、外尿道口は陰茎亀頭(glans penis)の先端に位置する縦方向のスリット状開口部です(Moore et al., 2018)。この開口部は通常5-7mmの長さを有し、尿道の最終拡張部である舟状窩(fossa navicularis)の遠位端に開口しています。舟状窩は尿道海綿体部の末端約1-1.5cmの区間を占め、周囲は亀頭の海綿体組織に囲まれています(Gray and Standring, 2020)。組織学的には、外尿道口周囲の上皮は重層扁平上皮で裏打ちされており、外界環境への暴露に対する保護機能を担っています(Netter, 2018)。

女性の外尿道口

女性の外尿道口は膣前庭(vestibulum vaginae)の前方部、陰核(clitoris)と膣口(vaginal orifice)の中間に位置する円形または楕円形の開口部です(Standring, 2021)。その直径は通常4-6mmで、男性に比べて短い尿道(約3-4cm)の末端として開口しています。解剖学的には、外尿道口の周囲は小陰唇(labia minora)の内側面に接しており、尿道口ヒダ(plicae urethrae)と呼ばれる粘膜の襞状構造によって取り囲まれることが一般的です(Drake et al., 2019)。この開口部の位置は個人差があり、陰核からの距離は臨床的に重要な解剖学的指標となります(Moore et al., 2018)。

神経支配と血管供給

外尿道口周囲の感覚神経支配は、男性では陰部神経(pudendal nerve)の陰茎背神経枝(dorsal nerve of penis)により、女性では同じく陰部神経の陰核背神経枝および会陰神経により供給されます(Gray and Standring, 2020)。血液供給は、男性では尿道動脈および陰茎背動脈の遠位枝から、女性では尿道動脈および膣動脈の枝から行われます(Netter, 2018)。

臨床的意義

診断および処置における重要性

臨床実践において、外尿道口は尿道カテーテル挿入の初期解剖学的目標点として極めて重要です(Drake et al., 2019)。カテーテル挿入時には、男性では陰茎を上方に牽引して尿道の自然な湾曲を最小化し、女性では外尿道口の同定が処置の成功に直結します。また、尿道鏡検査や膀胱鏡検査などの内視鏡的処置においても、外尿道口は器具挿入の入口として機能します(Standring, 2021)。

病態と疾患

外尿道口は様々な病態の発生部位となります。尿道狭窄(urethral stricture)は外尿道口を含む尿道の任意の部位で発生しうる線維性瘢痕化であり、排尿困難や尿流減弱を引き起こします(Moore et al., 2018)。尿道炎(urethritis)、特に淋菌性尿道炎では、外尿道口からの膿性分泌物が特徴的な所見となります(Drake et al., 2019)。尿道口周囲炎は外尿道口周辺組織の炎症性病変であり、発赤、腫脹、疼痛を伴います(Gray and Standring, 2020)。

先天性異常

男性における主要な先天性異常として、尿道下裂(hypospadias)があります。これは外尿道口が陰茎腹側の正常位置より近位に開口する状態で、発生頻度は出生1000人あたり約3-8人とされています(Netter, 2018)。尿道下裂は亀頭型、陰茎型、陰嚢型、会陰型に分類され、重症度により外科的修復が必要となります(Moore et al., 2018)。尿道上裂(epispadias)はより稀な異常で、外尿道口が陰茎背側に開口する状態です(Standring, 2021)。

女性特有の病変として、尿道口脱(urethral prolapse)は尿道粘膜が外尿道口から脱出して環状腫瘤を形成する状態で、特に閉経前の少女や閉経後女性に見られます(Drake et al., 2019)。尿道カルンクル(urethral caruncle)は外尿道口の後壁に発生する良性の血管性ポリープ様病変で、閉経後女性に多く、出血や排尿時不快感の原因となります(Gray and Standring, 2020)。

性差と臨床的影響

女性の尿道が男性に比べて著しく短いこと(女性3-4cm vs 男性18-20cm)は、女性における尿路感染症の高頻度発生の解剖学的基盤となっています(Standring, 2021)。外尿道口から膀胱までの距離が短いため、外尿道口周囲の細菌が膀胱に到達しやすく、特に性交後や不適切な会陰衛生により感染リスクが上昇します(Moore et al., 2018)。