精丘 Colliculus seminalis

J774.png

J0774 (男性の膀胱、適度に拡張され開放された:前方からの図)

J785.png

J0785 (射精管、前部および上部)

J787.png

J0787 (男性の骨盤臓器の正中矢状断:左側からの右半分の図)

精丘(せいきゅう)は、男性尿道の前立腺部に位置する小丘状の隆起構造であり、射精機能において重要な解剖学的ランドマークです。

解剖学的構造

位置と形態:精丘は尿道稜(urethral crest)の中央部、前立腺部尿道の後壁に位置し、長さ約15-20mm、幅約3mm、高さ約3-4mmの縦長の卵円形隆起を形成しています(Standring, 2020; Moore et al., 2018)。この構造はラテン語で「verumontanum(真の山)」とも呼ばれ、内視鏡検査時に明瞭に観察される解剖学的指標となります(Helfand et al., 2007)。

組織構造:精丘は平滑筋繊維、弾性結合組織、豊富な血管網、および高密度の神経終末から構成され、移行上皮で覆われています(Nguyen and Brahmbhatt, 2022)。組織学的には、精丘の中心部には射精管周囲に密な平滑筋束が配置され、射精時の収縮機能を担っています(Shafik et al., 2005)。

開口部の配置:精丘の頂点部には左右の射精管(ejaculatory ducts)が開口し、精囊と精管からの分泌物を尿道内に排出します(Netter, 2019)。精丘の両側には多数の前立腺小管(prostatic ducts)の開口部が分布し、前立腺液の排出路を形成しています(Standring, 2020)。精丘の基部付近には前立腺小室(prostatic utricle)の開口部が存在し、これはミュラー管遺残構造です(Moore et al., 2018)。

神経支配:精丘は下腹神経叢からの交感神経線維(主にTh10-L2由来)、骨盤神経叢からの副交感神経線維(S2-S4由来)、および陰部神経からの体性感覚線維による三重の神経支配を受けています(Giuliano and Clément, 2005)。この豊富な神経支配により、精丘は射精反射の重要な求心性および遠心性経路の中継点として機能します(Shafik et al., 2005)。

血管供給:精丘への血液供給は主に前立腺動脈の枝(内陰部動脈または下膀胱動脈の分枝)によって行われ、静脈還流は前立腺静脈叢を経由します(Standring, 2020)。

臨床的意義

射精機能における役割:精丘は射精の調節において中枢的役割を果たします。射精時には、交感神経の刺激により射精管周囲の平滑筋が収縮し、精液成分を尿道内に排出します(Shafik et al., 2005)。同時に、精丘の感覚神経終末は機械的刺激を受容し、脊髄射精中枢(Th12-L2)への求心性信号を伝達することで、射精反射の開始と維持に寄与します(Giuliano and Clément, 2005)。

病理学的変化:精丘炎(colliculitis seminalis)は慢性前立腺炎の一部として発生することがあり、射精痛、血精液症、排尿困難の原因となります(Issa, 2008)。精丘肥大は前立腺肥大症に伴って生じることがあり、尿道狭窄や排尿障害を引き起こす可能性があります(Helfand et al., 2007)。

手術時の指標:経尿道的前立腺切除術(TURP)において、精丘は切除範囲を決定する重要な解剖学的ランドマークとして機能します。外括約筋損傷による尿失禁を避けるため、切除は精丘の遠位側を超えないように注意する必要があります(Issa, 2008; Helfand et al., 2007)。また、レーザー前立腺手術においても精丘は治療範囲の下限を示す指標として用いられます(Issa, 2008)。

診断的価値:内視鏡検査時の精丘の観察は、射精管閉塞、精囊嚢胞、前立腺小室嚢胞などの診断に有用です(Nguyen and Brahmbhatt, 2022)。精丘の形態異常は男性不妊症の評価において重要な所見となることがあります(Shafik et al., 2005)。

参考文献