
J0787 (男性の骨盤臓器の正中矢状断:左側からの右半分の図)

J0788 (陰茎、球海綿体筋および筋膜と皮膚の一部を除去:下方からの図)


陰茎包皮(preputium penis)は、陰茎亀頭を覆う二重の皮膚ひだであり、陰茎体部の皮膚が亀頭の基部で反転して形成される可動性の構造である (Cold and Taylor, 1999)。包皮は冠状溝(sulcus coronarius)の後方で反転し、亀頭表面を覆う薄い粘膜性上皮に移行する。この反転部は、包皮内板(inner prepuce)と外板(outer prepuce)の二層構造を形成し、両層の間には包皮腔(preputial sac)と呼ばれる潜在的な空間が存在する (Taylor et al., 1996)。
包皮の腹側正中部には、包皮小帯(frenulum preputii)が存在する。これは包皮内板から亀頭下面の尿道口直下に伸びる三角形の皮膚ひだであり、血管と神経に富む感覚受容器の高密度領域である (Taylor et al., 1996)。包皮小帯は陰茎の勃起時に緊張し、包皮の過度な後退を防ぐ役割を果たす。包皮の長さと可動性には個人差があり、完全に亀頭を覆うものから、亀頭の一部のみを覆うものまで多様である (Gairdner, 1949)。
包皮外板は、表皮、真皮、および薄い平滑筋線維層から構成される。表皮は重層扁平上皮であり、陰茎体部の皮膚と連続するが、包皮外板の皮膚は陰嚢皮膚と同様に色素沈着が顕著で、皮下脂肪組織がほとんど存在しない (Cold and Taylor, 1999)。真皮には豊富な血管網、神経終末、およびマイスナー小体やパチニ小体などの機械受容器が分布する。
包皮内板は粘膜性の重層扁平上皮で覆われており、角化は最小限である。内板の固有層には多数の皮脂腺が存在し、これらは包皮腺(preputial glands)またはタイソン腺(Tyson's glands)と呼ばれる (Moses et al., 1998)。これらの腺は思春期以降に活性化し、脂質を主成分とする分泌物を産生する。この分泌物は剥離した上皮細胞と混合してスメグマ(smegma、恥垢)を形成し、包皮腔内に蓄積する。スメグマは本来、亀頭と包皮の潤滑作用を持つが、不適切な衛生状態では細菌増殖の基質となり炎症の原因となる (Moses et al., 1998)。
包皮の神経支配は豊富であり、特に包皮小帯と包皮縁(mucocutaneous junction)には自由神経終末とマイスナー小体が高密度に分布する。Taylor et al. (1996) は、包皮が陰茎の最も神経支配密度の高い領域の一つであり、触覚および性的感覚において重要な役割を果たすことを示した。
胎生期において、包皮は妊娠8週頃から陰茎亀頭を覆うように発達し始める。当初、包皮内板と亀頭表面の上皮は癒着しており、これを包皮癒着(preputial adhesion)または生理的癒着(physiological adhesion)と呼ぶ (Gairdner, 1949)。この癒着は、妊娠後期から出生後にかけて徐々に分離していく過程を辿る。分離は上皮細胞のアポトーシスと角化により進行し、包皮腔が形成される。
Gairdner (1949) の古典的研究によれば、出生時には約96%の男児で包皮が完全に亀頭を覆っており、包皮を後退させて亀頭を露出できるのは約4%のみである。生後1年で約50%、3歳で約90%の男児が包皮を後退可能となり、思春期までにほぼすべての男児で包皮の完全な可動性が獲得される。この生理的過程の理解は、生理的包茎と病的包茎の鑑別において極めて重要である (McGregor et al., 2007)。
包茎は、包皮口の狭窄により包皮を後退させて亀頭を露出できない状態と定義される。Rickwood et al. (2000) は、包茎を生理的包茎(physiological phimosis)と病的包茎(pathological phimosis)に分類した。生理的包茎は、前述の発達過程における一時的な状態であり、包皮と亀頭の生理的癒着または包皮口の相対的な狭窄によるもので、通常は成長とともに自然に改善する。
病的包茎は、包皮口の瘢痕性狭窄を特徴とし、多くの場合、反復する亀頭包皮炎(balanoposthitis)や強制的な包皮後退による外傷の結果として生じる。病的包茎の最も一般的な原因は、硬化性苔癬(lichen sclerosus、以前はバラニティス・キサロティカ・オブリテランスと呼ばれた)である (McGregor et al., 2007)。これは、包皮先端部に白色の硬化性変化をもたらす慢性炎症性疾患である。
包茎の有病率には民族差があり、Rickwood et al. (2000) の報告では、イギリスの小児における病的包茎の発生率は約1-2%とされる。一方、日本を含むアジア諸国では生理的包茎の残存率が比較的高いとされるが、これは遺伝的要因と文化的な包皮ケアの習慣の違いによる可能性がある。
重度の包茎は、排尿困難、包皮の風船様膨隆(ballooning)、尿流の細小化や偏位を引き起こす。また、包皮腔内へのスメグマの蓄積と不十分な衛生により、反復性の亀頭包皮炎や尿路感染症のリスクが増大する (Moses et al., 1998)。長期的には、慢性炎症による扁平上皮癌のリスク上昇も報告されている。
治療法としては、軽度の病的包茎に対しては局所コルチコステロイド軟膏の塗布が有効である (McGregor et al., 2007)。重度または難治性の症例では、包皮形成術(preputioplasty)または環状切除術(circumcision)などの外科的介入が必要となる。包皮形成術は包皮を温存しながら包皮口を拡大する手技であり、環状切除術は包皮を完全に切除する手技である。