精管

精管は精巣上体から尿道へ精子を運ぶ管です。精巣上体から始まり、精巣上体尾に続く通路で、精索の中に存在します。全長は約30cm(伸ばすとその2倍)で、膀胱底で紡錘状に膨らんで精管膨大部と呼ばれます。膨大部の内部には膨大部憩室があります。膨大部の下端では精嚢が精嚢排出管を通じて合流します。遠位部は射精管と呼ばれ、尿道前立腺部の後壁にある精丘上で尿道に開口します。

日本人のからだ(村上 弦 2000)によると

精管の変異

精管の欠損については200例以上の報告があり、精巣上体や精嚢の異常が認められることが多い(馬場ら、1991)。精管の異所性開口については15精管を含む10例の報告があり、多くは尿管や膀胱への開口で、高齢者で発見されることもある。男子小子宮への開口例は3例のみで、組織学的検索では、未熟な精嚢が男性小子宮壁に接していることが確認される。しばしばXYYという染色体異常を伴う(仲地ら、1987; 島田ら、1987)。

前立腺の変異

前立腺の欠損は稀です(宮野ら、1982)。高度の男性半陰陽や真性半陰陽では、発育不全があるほどの欠損が見られます。異所性前立腺は後部尿道内や膀胱内のポリープとして稀に発見されます。

尿生殖隔膜と骨盤あるいは肛門との位置関係については、岡元・淵野(1959)の計測が参考になります。

前立腺・精嚢にはしばしば石灰化が見られます。前立腺後方のいわゆるディノビエDenonvilliers筋膜については、自家所見20体によると、形態に大きな個体差があります。しかし一般に、膜性構造は前立腺側に、脂肪組織は直腸側に大別できます。上膀胱動脈を芯とする膀胱下腹筋膜という腹膜ヒダも、その発達程度に個体差があります(佐藤達夫, 1989 a,b,c, 1990 a,b, 1991 b)。前立腺前面で特に発達するサントリーニ(Santorini)静脈叢は、その深さによって3層に分けられます(仲野, 1988)。尿生殖隔膜を貫く陰茎海綿体神経は、主に5時および7時方向(恥骨結合を0時とする)を尿道縁から約8mm離れて走行します(塙, 1994)。しかし自家所見によると、恥骨下弓直下で同神経は急激に前方へ移動し、11時と1時方向に至ることがあります。

ミュラー管遺残による変異

多くは膀胱に続く策状物として,精巣停留や鼠径ヘルニアに伴い成人になってから発見される.子宮腺や卵管組織からなる.交叉性睾丸転位症の約半数にミュラー管遺残が確認されている.精巣下行機序とミュラー管抑制因子の関係から,交叉性睾丸転位症の全例にミュラー管遺残を伴うという説がある.また,大きなミュラー管嚢胞というかたちで男性の正中線上で膀胱と直腸とのあいだ,前立腺の直上に遺残することがある(図141).

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図141 ミュラー管嚢胞(市川ら, 1986)

図141 ミュラー管嚢胞

正面像と側面像。精丘部から始まり、膀胱の後面に広がります。