
精巣上体管(ductus epididymidis)は、高度に屈曲した単一の管で、伸ばすと約5~6mの長さになります (Standring, 2020)。直径は約0.2~0.3mmで、精巣上体頭(caput epididymis)で始まり、そこで10~15本の精巣輸出管(ductuli efferentes testis)を受け入れます。精巣上体管は精巣上体体(corpus epididymis)を通過し、最終的に精巣上体尾(cauda epididymis)で終わり、精管(ductus deferens)に連続しています (Moore et al., 2018)。
組織学的には、精巣上体管は偽重層円柱上皮(pseudostratified columnar epithelium)で裏打ちされており、その表面には不動性の繊毛状微絨毛(stereocilia)が存在します (Young et al., 2014)。これらの微絨毛は吸収機能を持ち、管腔内の水分を減少させることで精子濃度を高めます。上皮下には平滑筋層があり、蠕動運動によって精子の輸送を助けています (Mescher, 2018)。精巣上体管の上皮細胞は、精子成熟に必要な様々な分泌物を産生します (Cornwall, 2009)。
精巣上体炎(epididymitis):精巣上体管は細菌感染の好発部位であり、特に性感染症(クラミジア、淋菌)や尿路感染症の合併症として発症することがあります。急性精巣上体炎では陰嚢の疼痛、腫脹、発赤が生じ、慢性化すると精巣上体管の線維化を来すことがあります (Tracy et al., 2008; Trojian et al., 2009)
男性不妊症:精巣上体管の閉塞は閉塞性無精子症(obstructive azoospermia)の原因となり得ます。先天性の精巣上体管欠損や、感染症・外傷による瘢痕形成が原因となります。この場合、精巣では正常に精子が産生されているにもかかわらず射精液中に精子が認められません (Jungwirth et al., 2018; Esteves et al., 2021)
精管結紮術(vasectomy):精巣上体は精管結紮術の際に同定される重要な解剖学的指標です。手術では精管を精巣上体尾部の近位で結紮・切断し、永続的な避妊効果を得ます (Cook and Karpas, 2017)
精巣上体嚢胞(epididymal cyst):精巣上体管の拡張や閉塞により液体貯留が生じ、無症候性の嚢胞を形成することがあります。通常は良性で経過観察されますが、大きなものは外科的切除の適応となります (Dagur et al., 2018)