精巣上体 Epididymis

精巣上体(epididymis)は副睾丸とも呼ばれ、精巣から精管へ精子を輸送する管状の器官です。解剖学的には精巣の上端から後縁にかけて接し、共通の漿膜性被膜(精巣鞘膜)に包まれています(Moore et al., 2018)。平均重量は約2gで、長さは約6〜7cmです(Standring, 2020)。

形態学的特徴

精巣上体は形態学的に3つの部分に分けられます:

組織学的特徴

組織学的には、精巣上体管は偽重層円柱上皮で裏打ちされ、管腔面には不動毛(stereocilia)と呼ばれる長い微絨毛が存在します。平滑筋層が管を取り囲み、精子の輸送を助けています(Ross and Pawlina, 2021)。

生理学的機能

臨床的意義として、精巣上体は以下の重要な機能を担っています:

臨床的意義

精巣上体は炎症(精巣上体炎)、嚢胞形成、腫瘍など様々な病態の発生部位となります。特に精巣上体炎は性感染症や尿路感染症に続発することが多く、鼠径部痛や精巣上体の腫脹・圧痛を特徴とします(Trojian et al., 2009)。また、精巣上体管の閉塞は男性不妊の原因となることがあります(Jungwirth et al., 2018)。精巣上体は触診によって評価可能で、精巣との関係性は超音波検査で詳細に観察できます。

参考文献