
J0777 (精巣鞘膜(臓側板)を開いた後の右の精巣と精巣上体:外側からの図)
上精巣上体間膜は、精巣上体頭部と精巣鞘膜壁側板を連結する結合組織性の靭帯構造である (Standring, 2015)。この索状構造は精巣上体の上極から上方に伸び、陰嚢壁に付着することで、精巣上体を陰嚢内に固定する役割を果たしている (Moore et al., 2018)。
上精巣上体間膜は緻密結合組織から構成され、精巣上体頭部(caput epididymidis)の上端から起始する (Drake et al., 2019)。この靭帯は精巣固有鞘膜(tunica vaginalis propria)の壁側板に付着し、精巣と精巣上体の正常な位置関係を維持している (Netter, 2018)。精巣上体は精巣の後外側縁に沿って位置しており、本靭帯はその上部における主要な固定構造となっている (Standring, 2015)。
上精巣上体間膜は精巣上体の位置を安定化させ、精巣上体管(ductus epididymidis)の適切な配置を保持することで、精子の成熟と輸送という重要な生理機能を支持している (Moore et al., 2018)。また、精巣提筋(musculus cremaster)や精索と協調して、精巣の懸垂機構の一部を構成している (Drake et al., 2019)。
上精巣上体間膜の先天性欠損または脆弱化は、精巣捻転(testicular torsion)の素因となる可能性がある (Netter, 2018)。精巣捻転では精索が捻れることで血流障害が生じ、緊急手術を要する状態となる (Moore et al., 2018)。精巣固定術(orchiopexy)においては、この靭帯の解剖学的理解が不可欠であり、適切な精巣の固定位置の決定に重要な役割を果たす (Standring, 2015)。また、精巣上体炎(epididymitis)において、炎症がこの靭帯領域に波及することで疼痛が増強されることがある (Drake et al., 2019)。
上精巣上体間膜は中腎管(Wolffian duct)由来の精巣上体と、体腔上皮由来の精巣鞘膜との癒合過程において形成される (Drake et al., 2019)。この発生過程の異常は、停留精巣や精巣上体の位置異常と関連することがある (Moore et al., 2018)。