

陰核亀頭は、陰核の最先端部分であり、感覚神経が豊富に分布する勃起組織です。解剖学的には陰茎亀頭の相同器官(homologous structure)として発生学的に位置づけられ、長さ約5-10mm、幅約3-6mmの円錐形または球形の構造を呈しています(O'Connell et al., 2005)。組織学的には、海綿体組織(corpus cavernosum)と類似した勃起性血管組織から構成され、豊富な血管網と感覚神経終末を含んでいます(Baskin et al., 1999)。
陰核亀頭の表面は、重層扁平上皮(stratified squamous epithelium)で覆われており、角質化の程度は個体差があります。上皮下には、高密度の神経終末が分布し、特にマイスナー小体(Meissner's corpuscles)およびパチニ小体(Pacinian corpuscles)といった機械受容器が集中しています(Halata and Munger, 1986)。この神経密度は、人体の中でも最も高い部類に属し、1平方ミリメートルあたり約8,000本の神経線維が存在するとされています(Oakley et al., 2013)。
陰核亀頭の神経支配は、主に陰核背神経(dorsal nerve of clitoris)によって行われます。この神経は陰部神経(pudendal nerve, S2-S4)の終枝として、陰核体の背側を走行し、亀頭部に豊富な知覚枝を送り込んでいます(Yucel and Baskin, 2004)。陰核背神経は、性的感覚の伝達において中枢的な役割を果たし、その損傷は性機能障害の原因となります(Lowenstein et al., 2010)。
血液供給については、陰核背動脈(dorsal artery of clitoris)が主要な血管であり、これは内陰部動脈(internal pudendal artery)の終枝として亀頭に至ります(Yucel et al., 2004)。性的興奮時には、この動脈を通じた血流増加により、海綿体組織が充血し、亀頭の腫大と硬度の増加が生じます。静脈還流は、陰核背静脈(dorsal vein of clitoris)を経て深陰部静脈系に流入します(O'Connell et al., 2005)。
陰核亀頭は、陰核包皮(prepuce of clitoris)によって部分的または完全に覆われています。この包皮は、小陰唇(labia minora)の前端が合流することで形成される皮膚の襞で、可動性を有しています(Verkauf et al., 1992)。包皮の下方には、包皮腺(preputial glands)が存在し、皮脂様の分泌物を産生します。
陰核亀頭の基部は、陰核体(corpus clitoridis)と連続しており、陰核体は左右一対の陰核海綿体(corpora cavernosa clitoridis)から構成されます。陰核海綿体は、恥骨枝に付着する陰核脚(crus of clitoris)から起始し、恥骨結合の下方で合流して陰核体を形成した後、陰核亀頭に至ります(O'Connell et al., 1998)。
下方には前庭球(bulb of vestibule)が存在し、これも勃起組織であり、性的興奮時に充血します。前庭球は球海綿体筋(bulbospongiosus muscle)によって覆われており、陰核との機能的な連携が認められています(O'Connell et al., 2005)。
陰核亀頭は、女性の性的感覚において最も重要な器官の一つです。直接的な触覚刺激により、性的興奮と快感が惹起されます。Masters and Johnson(1966)の研究では、オーガズムの神経生理学的メカニズムにおいて、陰核刺激が中心的役割を果たすことが示されています。
陰核肥大症(clitoromegaly)は、陰核亀頭の異常な腫大を特徴とし、先天性副腎過形成(congenital adrenal hyperplasia)やアンドロゲン産生腫瘍などの内分泌疾患により生じます(Baskin et al., 1999)。診断には、亀頭の長径と横径の測定が重要であり、正常範囲を超える場合は精査が必要です(Oberfield et al., 1989)。
女性性器切除(Female Genital Mutilation, FGM)は、陰核亀頭の部分的または全体的切除を含む伝統的慣習であり、深刻な身体的・心理的影響をもたらします。WHO(2008)の分類によれば、Type Iは陰核切除(clitoridectomy)として定義され、陰核亀頭の部分的または全体的切除が行われます。この処置により、性的感覚の著しい減少や痛み、感染症などの合併症が生じます(Abdulcadir et al., 2016)。