陰核体 Corpus clitoridis

J796.png

J0796 (女性の骨盤臓器、左側の骨盤壁を除去:左側からの図)

J799.png

J0799 (女性の前庭球と尿生殖三角:下方からの図)

J806.png

J0806 (女性の会陰筋:下から見た図)

解剖学的構造

陰核体(corpus clitoridis)は、左右1対の陰核海綿体(corpora cavernosa clitoridis)が結合性の陰核筋膜(fascia clitoridis)で包まれてできた構造です(O'Connell et al., 2005)。陰核海綿体は陰核脚(crura clitoridis)から始まり、恥骨下縁で会合して陰核体を形成します(Wilkins et al., 2020)。組織学的には、陰核海綿体は血管腔(sinusoids)と平滑筋からなる勃起組織で構成されており、その構造は陰茎海綿体と類似しています(Baskin et al., 2018)。海綿体の中心部には小梁(trabeculae)が存在し、これらの間に血管腔が形成されています。これらの海綿体は性的興奮時に動脈血流が増加することで血液で充満し、サイズと硬度が増加します(Levin, 2015)。陰核体の長さは平均して約2.5〜3.5cmで、直径は約0.5〜1.0cmです(Lloyd et al., 2005)。

発生学的特徴と比較解剖

陰核は胎生期の生殖結節(genital tubercle)から発生し、陰茎と発生学的に相同な器官です(Baskin et al., 2018; Cunha et al., 2019)。胎生8週頃までは男女の外性器は未分化ですが、その後のホルモン環境により性分化が進行します(Sinclair et al., 2021)。陰核は陰茎と比較して解剖学的に重要な違いがあります。特に陰茎と異なり尿道を貫いていないため、陰核体には尿道海綿体(corpus spongiosum)が存在しません(Di Marino and Lepidi, 2014)。陰核の全長はMRI研究により約7〜12cm程度と報告されていますが、その大部分は体内に位置し、外部から見える部分(陰核亀頭)はごく一部です(O'Connell et al., 2005; Yucel et al., 2004)。この内部構造の大きさは従来の解剖学的知見を大きく変えるものでした。

支持構造と臨床的意義

恥骨結合から始まる強靭な陰核提靱帯(suspensory ligament of clitoris)が陰核体の背側に付着し、支持構造として機能しています(Di Marino and Lepidi, 2014)。この靱帯は弾性線維と膠原線維からなり、陰核体を安定的に支持します。臨床的には、陰核体部は血管とリンパ管が豊富に分布し、特に陰核背動脈(dorsal artery of clitoris)と陰核深動脈(deep artery of clitoris)による血液供給を受けています(Puppo and Puppo, 2015)。また、高度な感覚神経支配(陰部神経の分枝である陰核背側神経からの豊富な神経終末)を受けているため、性的興奮時の重要な感覚器官となっています(Halata and Munger, 1986)。陰核体には約8,000個以上の感覚神経終末が存在すると推定されています(Foldes and Buisson, 2009)。女性の性機能障害(female sexual dysfunction: FSD)の評価や、性器切除(female genital mutilation: FGM)後の再建手術において重要な解剖学的指標となります(Abdulcadir et al., 2011; Puppo, 2013)。さらに、骨盤臓器脱手術や会陰形成術などの婦人科手術においても、陰核体の神経血管構造の温存が重要です(Lowenstein et al., 2010)。

参考文献