陰唇小帯 Frenulum labiorum pudendi

J800.png

J0800 (女性の外部性器:女性外陰部)

解剖学的構造

陰唇小帯(frenulum labiorum pudendi)は、小陰唇の後端が膣前庭の後方で結合する部位に形成される薄い粘膜性のヒダ状構造である(Standring, 2020)。この構造は会陰体の前方約1〜2cmに位置し、解剖学的には膣前庭の後縁を画する重要なランドマークとなる(Moore et al., 2018)。

組織学的には、陰唇小帯は重層扁平上皮で覆われており、角化層は通常薄いかまたは欠如している(Ross and Pawlina, 2016)。上皮下には疎性結合組織が存在し、少量の弾性繊維、コラーゲン線維、および豊富な血管網と神経終末を含んでいる(Gartner and Hiatt, 2020)。この領域には皮脂腺や汗腺は通常認められないが、個体差が存在する(Mescher, 2021)。

血管供給と神経支配

陰唇小帯の血液供給は主に内陰部動脈(internal pudendal artery)の枝である後陰唇動脈(posterior labial artery)から得られる(Standring, 2020)。静脈還流は対応する静脈系を経て内陰部静脈へ流入し、最終的に内腸骨静脈に注ぐ(Netter, 2019)。この領域のリンパ排液は浅鼠径リンパ節(superficial inguinal lymph nodes)に向かう(Moore et al., 2018)。

神経支配は陰部神経(pudendal nerve)の枝である後陰唇神経(posterior labial nerve)によって行われ、知覚神経および自律神経線維を含む(Standring, 2020)。この領域は性的感覚に関与する神経終末が豊富に分布しており、Meissner小体やPacini小体などの機械受容器が確認されている(Halata and Munger, 1986)。

発生学

胎生期において、外陰部は泌尿生殖洞(urogenital sinus)および生殖結節(genital tubercle)から分化する(Sadler, 2019)。陰唇小帯の形成は胎生12〜14週頃に開始され、小陰唇の後方融合部として認識可能となる(Larsen, 2015)。この時期、アンドロゲンの影響を受けずに発達が進行するため、性分化異常症において陰唇小帯の形態は診断的価値を持つ(Hughes, 2008)。

臨床的意義

性機能との関連

陰唇小帯は豊富な神経支配により性的感覚に関与する重要な構造である(Berman et al., 2001)。陰唇小帯の過度の緊張や短縮、瘢痕形成は性交痛(dyspareunia)の原因となることがあり、特に会陰裂傷の不適切な修復後に問題となる(Kalis et al., 2012)。外陰部疼痛症候群(vulvodynia)の一部症例では、陰唇小帯周囲の知覚過敏が報告されている(Haefner et al., 2005)。

分娩時の損傷

経腟分娩時、特に胎児娩出の第2期において、陰唇小帯は会陰体とともに伸展され損傷を受けやすい(Kettle and Tohill, 2008)。会陰裂傷が後方に進展する場合、陰唇小帯の裂傷を伴うことが多く、適切な解剖学的修復が求められる(Sultan et al., 2002)。不適切な縫合は疼痛や性機能障害の原因となるため、層別修復と解剖学的復元が重要である(Fernando et al., 2013)。

診察における重要性

婦人科診察において、陰唇小帯の状態評価は外陰部の総合的評価の一部として重要である(Beckmann et al., 2022)。炎症性疾患(外陰腟カンジダ症、lichen sclerosus等)では陰唇小帯の発赤、浮腫、癒着が観察されることがある(Edwards and Lynch, 2004)。また、性的虐待や外傷の評価においても、陰唇小帯の損傷パターンは法医学的価値を持つ(Adams et al., 2018)。

参考文献