子宮

子宮は、骨盤腔のほぼ中央に位置する筋性の中空器官で、膀胱の後ろと直腸の前にあります。授精卵は卵管から送られてきて、子宮の内部に着床し、発育して胎児となります。子宮は妊娠していないときは非常に小さい(約2.5×4×7cm)が、妊娠とともに巨大になります。これは主として子宮筋層の平滑筋細胞の肥大と増殖、結合組織の増量によるものです。 子宮は西洋梨型の嚢状器官で、上縁(子宮底)の外側端に左右の卵管が開きます。ほぼ球状の糸球体は下方に伸びて円筒形の子宮頚となり、腟に向かって突出する子宮腟部を形成し、子宮頚を縦に貫く頚管は上方は子宮腔に開き、下方は外子宮口により腟の内腔に開きます。 子宮の外面は子宮外膜であり、その一部(子宮底と子宮体後面)のみを腹膜が覆っており、子宮漿膜をなし、他は粗線維精結合組織からなる蓋膜です。子宮壁は大部分を占める子宮筋層が非常に厚く、次の4層に分けられます(内方から外方の順)。

  1. 粘膜下層:大部分が縦走筋で、一部が斜走あるいは輪走筋。
  2. 血管層:多くの血管を含み、海綿状の構造をなす。輪状あるいは斜走筋。
  3. 血管上層:輪状あるいは縦走筋。
  4. 漿膜下層

子宮壁の内面を覆う粘膜を子宮内膜と呼びます。子宮体の内面を覆う子宮内膜は、月経周期とともに形態変化をし、妊娠によって脱落膜にかわります。しかし、頚管内面の子宮内膜は周期的変化を示しません。子宮内膜の表面上皮は単層円柱上皮で、線毛細胞と分泌細胞が混在しています。内膜の厚さは月経周期の時期によって異なりますが、厚い粘膜固有層(子宮内膜支持層)の中を、表面から垂直に管状の子宮腺が伸びています。子宮腺の中には線毛細胞も含まれます。 頚管粘膜は、長い円柱上皮で覆われ、その上皮細胞は粘液によって満たされています。子宮頚腺は複雑に分枝する大きな腺で、腺細胞は高い円柱状細胞で、粘膜を分泌します。この腺の導管が濃い粘液のために閉塞し、または腺体が極端に貯留した粘液のために拡大して肉眼で小胞状に見えることがあり、古くからナボットの卵(嚢胞)と呼ばれてきました。子宮頚部の外表面は平滑で、腟と道央に重層扁平上皮で覆われています。頚管の円柱上皮から重層扁平上皮への移行は、外子宮口のすぐ内側で急激に変化します。頚管内の円柱上皮が斑点状に子宮腟部の重層扁平上皮の部分に紛れ込むものを、頚部ビランと呼びます。これは炎症を引き起こしやすく、また子宮頚癌の原因になることがあります。

日本人のからだ(村上 弦 2000)によると

子宮疾患ほか

子宮筋腫は、成人女性の数%から10%程度に見られます(長沢ら、1977年)。子宮内膜症は、卵巣、ダグラス窩の腹膜、直腸、子宮支帯などに見られることがあります(鈴木ら、1975年)。子宮脱は、婦人科外来の2.6%または1.0-1.1%に見られ、56-75歳が77%を占め、経産回数は平均4.5-5.5回です。直腸脱・膀胱脱を伴う例が22.6%、膀胱脱のみを伴う例が63.1%に見られます(島野ら、1987年)。ガルドナー氏管(中腎管遺残)由来の嚢胞は、子宮広間膜から膣の前側壁に生じます。