男の尿道

男の尿道は長さ約15~20cmである。膀胱頚の内尿道口に始まり、前立腺内を走り、尿道生殖隔膜を貫通し、陰茎の体を通って亀頭の前端で外尿道口に開く。尿道は走行によって、前立腺部・隔膜部・海綿体部の3部に分けられる。まず前立腺を貫通し、これを尿道の前立腺部という。後(背)壁中央には尿道稜があり、膀胱垂の連続する縦の隆起である。尿同僚の中央部は紡錘状にふくらみ、これを精丘という。精丘には前立腺小室が盲嚢として開く。これは胎生期のMueller管の名ごりで、男性子宮または男性腟ともいう。前立腺小室の両側に射精管が開口し、これより先の尿道は尿路と精液の通路を兼ねる。精丘両側のへこみが前立腺洞で、多くの前立腺管が開口する。つづいて尿道は尿生殖隔膜を貫く。これが隔膜部で、約1cm長。さらに外尿道口までが海綿体部で、12~14cm長。亀頭内の部分が膨大し、ここを尿道腺窩という。その後端上壁に舟状窩弁とよばれるヒダがある。海綿体部の粘膜には陥凹が多数みられ、尿道腺(リットレ腺)が開口する。

日本人のからだ(村上 弦 2000)によると

(1)長さ

男性尿道の全長は16.0-18.0 cmで、移動部の長さは6.6-7.5cm、固定部の長さは9.6-10.5 cmです。

前立腺部は1.0-1.4 cmで、内尿道口と射精管口との距離は1.0-1.3cmです(浦,1987)。

女性尿道の長さは平均36 mmで、約7割が31-40 mmの範囲に収まります(細川,1956)。別のデータでは平均42 mmで、身長に比例して長くなり、分娩時には93 mmまで延長し、分娩直後には69 mmに戻ると報告されています(有馬, 1958 a,b)。

(2)尿道弁,尿道憩室

先天性尿道弁には、精丘に近接または連絡する後部尿道弁と、球部または陰茎部尿道に存在する前部尿道弁があります。これらには多くの臨床報告があります(寺島, 1977; 土屋ら, 1986; 後藤ら, 1991)。尿道弁は、多くの場合、幼少期に発見され治療されます。前部尿道弁は、しばしば憩室を伴うか、あるいは憩室との鑑別が困難となることが多いです。尿道憩室は、一般的には後天性のものが多いです。

女性の尿道憩室は、泌尿器科の女性患者の0.8%に見られ、ほとんどが後天性です。発見年齢は25〜55歳で、日本には187例の報告があります(三品・渡辺, 1988)。

(3)尿道無形成

陰茎無形成とともに尿道無形成の報告があります(市川ら、1986)。

(4)尿道下裂と男子小子宮

尿道下裂の原因として、男子小子宮(prostatic utricle)の拡張が注目されています。男子小子宮は通常、造影されることはまれですが、尿道下裂患者では平均して27.5%で確認されます。また、下裂の程度が強いほど男子小子宮の造影率が高まります。生駒らは男子小子宮を造影所見から4型に分類しています(図138)。さらに、尿道下裂は停留睾丸や精巣低形成など、陰嚢内容の奇形を高率に合併しています(生駒ら、1981)。尿道が陰茎背側に開口した尿道上裂の報告は少なく、日本では40余例にとどまります。

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