
J0773 (女性の膀胱と尿路、膀胱は収縮:尿道を前方から開いている図)

J0774 (男性の膀胱、適度に拡張され開放された:前方からの図)

定義と位置
尿管口(Ostium ureteris)は、腎臓から膀胱へ尿を運ぶ管である尿管の膀胱への開口部である(Moore et al., 2018)。形態学的には裂目状(スリット状)の開口部を呈し、膀胱三角(trigone of bladder)の後外側角に左右対称に位置する(Drake et al., 2020)。膀胱三角は膀胱底部の平滑な三角形領域で、両側の尿管口と内尿道口を結ぶ三点で構成される(Standring, 2021)。
解剖学的特徴
成人では両尿管口間の距離は約2.5cmであるが、膀胱充満度により変動する(Netter, 2019)。尿管は膀胱壁に到達すると、膀胱底部の粘膜下を約1.5〜2.0cm斜めに走行した後、尿管口として開口する(Gray and Goss, 2017)。この斜走路は尿管壁内部(intramural ureter)と呼ばれ、逆流防止機構として重要な役割を果たす(Wein et al., 2021)。尿管口周囲の膀胱壁は、尿管三角筋(trigonal muscle)と呼ばれる特殊な平滑筋層で補強されている(Tanagho, 2008)。
組織学的構造
尿管口の粘膜は移行上皮(transitional epithelium)で覆われ、膀胱粘膜と連続している(Ross and Pawlina, 2020)。尿管壁内部では、尿管固有の筋層と膀胱筋層が複雑に交錯し、弁様構造を形成する(Cortivo et al., 2011)。この構造により、膀胱内圧上昇時には尿管口が受動的に閉鎖される機構が確立される(Drake et al., 2020)。
逆流防止機構
尿管口の最も重要な機能は、膀胱尿管逆流(vesicoureteral reflux, VUR)の防止である(Elder et al., 2017)。膀胱が充満すると膀胱壁が伸展し、尿管口は閉じる方向に牽引される(Netter, 2019)。同時に、膀胱内圧の上昇により尿管壁内部が圧迫され、弁様機構が強化される(Wein et al., 2021)。この二重の機構により、排尿時の高い膀胱内圧下でも尿の逆流が防止される(Tanagho and McAninch, 2008)。
蠕動運動との連携
尿管の蠕動運動は尿管口まで伝播し、周期的に尿を膀胱内へ押し出す(Moore et al., 2018)。正常では片側の尿管から約10〜15秒ごとに尿が排出されるが、これは膀胱鏡検査時に噴出(jet phenomenon)として観察できる(Standring, 2021)。この蠕動波は尿管口開閉のタイミングを調整し、効率的な尿排出と逆流防止を両立させる(Gray and Goss, 2017)。
内視鏡的観察
尿管口は膀胱鏡検査により容易に観察可能である(Wein et al., 2021)。正常な尿管口は裂目状で、粘膜色調は周囲膀胱粘膜と同様である(Tanagho and McAninch, 2008)。尿管口の形態異常(円形化、開大、変形など)は先天性異常や逆流症を示唆し(Elder et al., 2017)、位置異常(異所開口)は尿路奇形の診断手がかりとなる(Moore et al., 2018)。
病態と診断
尿管口の形態変化は様々な病態を反映する(Standring, 2021)。尿管結石が尿管口付近に嵌頓した場合、尿管口周囲の浮腫、充血、出血が観察される(Wein et al., 2021)。炎症性疾患では尿管口の発赤や腫脹が認められ、腫瘍性病変では尿管口からの腫瘤突出や変形が見られることがある(Drake et al., 2020)。膀胱尿管逆流症では、尿管口の開大や形態異常(ゴルフホール様変化など)が特徴的である(Elder et al., 2017)。
臨床的処置