
J0773 (女性の膀胱と尿路、膀胱は収縮:尿道を前方から開いている図)

J0774 (男性の膀胱、適度に拡張され開放された:前方からの図)
尿管間ヒダ(Plica interureterica)は、尿管ヒダ(Plica ureterica)とも呼ばれ、膀胱三角(Trigonum vesicae)の後縁を形成する重要な解剖学的構造です。膀胱の内面に位置し、両側の尿管開口部(Ostium ureteris)の間に横走する粘膜の隆起として観察されます(Standring, 2020)。この構造は膀胱粘膜下の平滑筋線維によって形成され、約1〜3mm程度の高さの横ヒダとして認められます(Drake et al., 2019)。尿管間ヒダは尿管の膀胱内開口部を連結し、膀胱底部と膀胱体部の境界として機能するとともに、膀胱鏡検査における重要な解剖学的指標となっています(Moore et al., 2018)。
尿管間ヒダは膀胱三角の基底部に相当し、膀胱内尿管(Pars intramuralis ureteris)の末端部が膀胱壁を貫通する部位を連結しています(Moore et al., 2018)。この構造は膀胱三角の後方境界となり、膀胱底部(Fundus vesicae)と膀胱体部(Corpus vesicae)の境界線としても機能します。組織学的には移行上皮に覆われ、その下層には膀胱平滑筋の特殊な配列があります(Paulsen and Waschke, 2018)。尿管間ヒダの粘膜下層には密な結合組織と平滑筋束が存在し、これらが協調的に機能することで尿管開口部の形態維持と逆流防止機構に寄与しています(Standring, 2020)。また、この領域は豊富な血管網を有し、下膀胱動脈(Arteria vesicalis inferior)の分枝によって栄養されています(Netter, 2019)。神経支配については、骨盤神経叢(Plexus hypogastricus inferior)からの自律神経線維が分布し、膀胱の排尿反射において重要な役割を果たしています(Drake et al., 2019)。
尿管間ヒダは膀胱鏡検査において重要な指標となります(Wein et al., 2021)。膀胱腫瘍や炎症性疾患の評価、また尿管口の同定において視認される目印です。膀胱三角部は生理的に血管が豊富で、炎症や腫瘍浸潤に対して反応性が高いため、この部位の変化は臨床的に重要な意味を持ちます(Tanagho and McAninch, 2012)。尿管間ヒダの形態異常や肥厚は、膀胱尿管逆流症(Vesicoureteral reflux: VUR)の病態生理において重要な役割を果たすことが知られています(Elder et al., 2020)。正常な尿管間ヒダは、尿管の膀胱壁内斜走と協調して逆流防止弁機構として機能しますが、この構造の発達不全や形態異常がある場合、膀胱内圧上昇時に尿の逆流が生じやすくなります(Tekgül et al., 2021)。また、膀胱腫瘍の好発部位として知られる膀胱三角部において、尿管間ヒダの変化は早期診断の手がかりとなることがあります(Babjuk et al., 2022)。膀胱炎、特に間質性膀胱炎では尿管間ヒダを含む膀胱三角部に発赤や浮腫が認められることが多く、診断的価値が高いとされています(Hanno et al., 2020)。
発生学的には尿生殖洞(Sinus urogenitalis)から発達し、胎生期にウォルフ管(Ductus mesonephricus)が膀胱に開口する部位の間に形成されます(Schoenwolf et al., 2021)。胎生第4週から第12週にかけて、中腎管の遠位部が尿生殖洞に吸収される過程で、尿管芽(Ureteric bud)の開口部が移動し、最終的に両側の尿管開口部の間に尿管間ヒダが形成されます(Sadler, 2019)。この発生過程において、尿管芽の異常な移動や分岐異常が生じると、尿管開口部の位置異常(異所性尿管開口)や重複尿管などの先天性疾患が発生する可能性があります(Moore and Persaud, 2020)。尿管間ヒダの発生異常は、尿路系の先天性疾患、特に膀胱尿管逆流症や水腎症と関連することがあり、小児泌尿器科領域において重要な臨床的意義を持ちます(Elder et al., 2020)。また、尿管間ヒダを含む膀胱三角部は、その発生起源が他の膀胱領域とは異なるため、組織学的特性や病理学的反応性にも違いが認められます(Larsen, 2021)。