尿管

尿管は全長約25~27cmで、上半分は腹腔内を通り、これを「腹部」、下半分は骨盤内に位置し、「骨盤部」と呼びます。尿管は腎盂から始まり、腎臓から膀胱までを結ぶ管で、移行上皮で裏打ちされ、輪層と縦層の平滑筋に囲まれ、外部は外膜で覆われています。尿管は腎門の内下側から出て、大腰筋の前面を斜めに内下方に進み、精巣(卵巣)動脈の後ろで交差しながら下行します。第四腰椎の高さで、総腸骨動・静脈の前を横切って骨盤内に入り、骨盤の側壁に沿って走り、最後に前内方にまたがって骨盤底の上面を走り膀胱に開口します。尿管は、腎盂から尿管への移行部(上端部)、腹部から骨盤部への移行部(この部分は総腸骨動・静脈と交差し、尿管は腹膜と癒着しています)、そして膀胱壁を貫く部分(尿管は膀胱壁を斜めに貫き、その長さは約2cmです)の3箇所に、やや細くなる狭窄部が存在します。

日本人のからだ(村上 弦 2000)によると

(1)計測

男性の長さは右が29.8 cm、左が30.6 cmで、女性では右が28.6 cm、左が30.1 cmです(喜多, 1930)。壁の厚さと強度については、浅見(1961)の研究が参考になります。

(2)尿管の膀胱異所性開口

日本では、700例以上の報告がありますが、女性が80%以上を占めています(寺田ら、1988; 長浜ら、1993; 山田ら、1993)。日本では、異所性開口を示す尿管と正常尿管をそれぞれの本数に基づいたThom's分類(Thom, 1928)が一般的に用いられます(図133)。多くは1側尿管の異所性開口(I型)です。

男性の尿管異所性開口112例を整理すると、両側性は4例のみで、特に左右差は見られません。発見年齢は20歳代(23.2%)以降の成人が多く、女性とは異なります。Thom's分類では、I型が60.7%、II型が3.6%、III型が18.8%、IV型が0%、V型が2.7%、VI型が0%となっています。稀なVI型については山元(1955)の報告があります(図134)。開口部位は、精嚢が41.4%、後部尿道が31.9%(urogenital sinus ectopiaと呼ばれる)、射精管が9.5%、精管が5.4%、膀胱頚が3.6%となっています。精嚢、射精管、精管に開口する例はmesonephric duct ectopiaと呼ばれ、80.0%が腎形成異常を伴います(長浜ら、1993)。

女性の尿管異所性開口561例を整理すると、左右差は不明(おそらく見られない)で、発見年齢は不詳ですが、幼小児期が多いと考えられます。561例をThom’s分類に従って分類すると、I型が65.0%、II型が1.6%、III型が22.6%、IV型が1.6%、V型が4.0%、VI型が1.3%となります。また、開口部位は、腔が63.2%、腔前庭が16.2%、尿道が13.1%、膀胱頚が4.4%、ガルトナー氏管が2.3%となっています(寺田ら、1988; 山田ら、1993)。

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図133 異所性尿管開口におけるThom分類(長浜ら, 1993)

図133 異所性尿管開口におけるThom分類

異所性の開口を持つ尿管は点線で示されます。これは正常な尿管(実線)と重複して表示されることがあります。

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図134 重複腎盤に伴う完全重複尿管の1例(山元, 1955)