上端;上極(腎臓の)Extremitas superior renis; Polus superior renis

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J0765 (右腎:前面からの図)

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J0769 (露出された腎盂を持つ右腎臓:後方からの図)

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J0770 (新生児の腎臓:前方からの図)

定義と解剖学的位置

腎臓の上極(extremitas superior renis; polus superior renis)は、腎臓の頭側端を指し、丸みを帯びた形態を呈する解剖学的構造です(Standring, 2016)。腎臓は後腹膜腔に位置し、通常第11胸椎(T11)から第3腰椎(L3)の高さに存在しますが、上極はより頭側に位置し、第11-12肋骨の後方に存在します(Gray and Standring, 2016; Drake et al., 2019)。右腎の上極は肝臓右葉の下面(facies visceralis hepatis)と接触し、左腎の上極は脾臓の臓側面と近接しています(Moore et al., 2018)。

解剖学的特徴

腎上極の最も重要な解剖学的特徴は、副腎(glandula suprarenalis)との密接な位置関係です。副腎は内分泌腺であり、腎上極に「帽子」のように覆いかぶさる形で位置します。特に右側では、副腎はピラミッド型を呈し、腎上極の前内側面を広く覆っています(Netter, 2019; Moore et al., 2018)。左側の副腎は半月状の形態を示し、腎上極の内側縁に沿って位置します(Standring, 2016)。

腎上極を覆う腎被膜(capsula fibrosa renis)は、腎臓の他の部分と比較して相対的に厚く、腎実質を保護する役割を果たしています(Netter, 2019)。腎被膜の外側には脂肪被膜(capsula adiposa)が存在し、さらにその外側を腎筋膜(fascia renalis; Gerota筋膜)が包んでいます(Drake et al., 2019)。

血管解剖学的には、腎動脈は通常腎門部で前枝と後枝に分岐し、さらに区域動脈へと分岐します。上極は上区域動脈(arteria segmentalis superior)によって栄養されており、この動脈は腎動脈の前枝から分岐します(Standring, 2016; Campbell-Walsh et al., 2020)。静脈還流は腎静脈を介して行われ、腎上極の静脈は腎門部で合流して主腎静脈を形成します(Moore et al., 2018)。

臨床的意義

  1. 副腎との解剖学的関係:副腎は腎上極に密接に位置するため、画像診断において両者の鑑別が重要となります。特にCTやMRIでは、造影パターンの違い(副腎は早期濃染と早期wash-outを示す)によって区別されます(Webb et al., 2015; Elsayes et al., 2017)。また、副腎腫瘍と腎上極腫瘍の鑑別は、治療方針の決定において極めて重要です(Kumar and Clark, 2017; Young et al., 2014)。
  2. 腫瘍学的考察:腎細胞癌(renal cell carcinoma)が腎上極に発生した場合、その解剖学的位置から複数の臨床的課題が生じます。第一に、肝臓、脾臓、副腎、横隔膜などの隣接臓器への直接浸潤のリスクが存在します(Campbell et al., 2020; Ljungberg et al., 2019)。第二に、腎上極の腫瘍は腎静脈本幹への距離が比較的短いため、早期に腎静脈内腫瘍血栓(tumor thrombus)を形成しやすいとされています(Blute et al., 2004; Chandrasekar et al., 2017)。腫瘍血栓は下大静脈へ進展し、さらには右心房まで達する可能性があり、予後に重大な影響を及ぼします(Tanagho and McAninch, 2020)。
  3. 外科的アプローチの特殊性:腎上極へのアクセスは、下極と比較して技術的に困難です。開放手術では、経胸腹的アプローチ(thoracoabdominal approach)が必要となることが多く、第10-11肋間を経由してアプローチします(Novick et al., 2009)。腹腔鏡下腎摘除術(laparoscopic nephrectomy)やロボット支援手術(robot-assisted surgery)においても、腎上極の剥離と血管処理は技術的難易度が高い操作とされています(Gill et al., 2002; Campbell et al., 2020)。特に副腎温存を試みる場合、腎上極と副腎の間の剥離層を正確に同定する必要があり、高度な外科技術が要求されます(Tanagho and McAninch, 2020)。
  4. 画像診断における評価:CTおよびMRIによる腎上極病変の評価では、複数の重要なポイントがあります。まず、隣接臓器(肝臓、脾臓、副腎)との境界面を明確にすることが重要です(Webb et al., 2015)。造影CTでは、腎実質は皮質相(cortical phase)、髄質相(medullary phase)、排泄相(excretory phase)と異なる時相で異なる造影パターンを示すため、多時相撮影が推奨されます(Elsayes et al., 2017)。また、腎上極の腫瘍性病変の評価には、Bosniak分類(嚢胞性病変の場合)やTNM分類が用いられます(Silverman et al., 2019)。MRIは軟部組織コントラストに優れており、腎上極腫瘍の副腎への浸潤評価や腎静脈内腫瘍血栓の評価に有用です(Hötker et al., 2016)。
  5. 腎部分切除術における考慮事項:近年、小径腎腫瘍に対しては腎機能温存を目的とした腎部分切除術(partial nephrectomy)が標準治療となっています(Campbell et al., 2020)。しかし、腎上極の腫瘍に対する腎部分切除術は、下極や外側の腫瘍と比較して技術的に困難であり、合併症率が高いことが報告されています(Simmons et al., 2009)。R.E.N.A.L. nephrometry scoreやPADUA分類などの複雑性スコアでは、上極の位置が手術難易度を高める因子として評価されます(Kutikov and Uzzo, 2009; Ficarra et al., 2009)。

参考文献