腎門 Hilum renale

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J0766 (左腎:前方からの図)

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J0767 (右腎:後方からの図)

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J0769 (露出された腎盂を持つ右腎臓:後方からの図)

解剖学的特徴

腎門(Hilum renale)は、腎臓の内側縁中央部に位置する陥凹した領域であり、腎動脈、腎静脈、尿管、リンパ管、および神経が出入りする重要な解剖学的構造です(Standring, 2020)。この部位は腎臓の機能的および構造的な「玄関口」として機能し、腎臓への血液供給と排泄経路の起点となっています(Moore et al., 2018)。

構造的配列

解剖学的には、腎門内の構造物は通常、前方から後方へ「腎静脈、腎動脈、腎盂(尿管の拡張部分)」の順に配列されています(Drake et al., 2019)。この配列は「VAP(Vein, Artery, Pelvis)」として記憶されることが一般的です。また、腎門は腎臓の長軸の中央よりもやや下方に位置し、腎洞(Renal sinus)へと連続しています(Netter, 2018)。腎動脈は通常、腎門で前枝と後枝に分岐し、それぞれが腎臓の前方部分と後方部分を栄養します(Gray et al., 2020)。

臨床的意義

臨床的には、腎門は超音波検査、CT、MRIなどの画像診断において重要な解剖学的指標となります(Standring, 2020)。画像診断では、腎門の構造物の配列や変位が腎疾患の診断に役立ちます。特に、腎門部の血管拡張や腫瘤性病変の検出において重要な役割を果たします(Webb et al., 2015)。

外科的には、腎臓手術(特に腎移植、部分腎摘除術、腎摘出術)において、腎門の血管構造の正確な把握は出血のリスク管理に不可欠です(Wein et al., 2020)。腎門部の血管損傷は致命的な出血を引き起こす可能性があるため、外科的介入の際には特に注意が必要です(Netter, 2018)。また、腎門部の解剖学的変異(副腎動脈や早期分岐など)は手術前の画像評価で確認する必要があります(Moore et al., 2018)。

腫瘍学的には、腎門リンパ節は腎癌のリンパ節転移の初期部位となることが多く、がんのステージング評価において重要な意義を持ちます(Campbell-Walsh-Wein et al., 2021)。腎門リンパ節の腫大は、腎細胞癌の進行度を示す指標となり、治療方針の決定に影響を与えます(Ljungberg et al., 2019)。

参考文献