泌尿器系 Systema urinarium

泌尿器系は腎臓系(系統腎臓;systema renale)とも呼ばれ、腎臓(ren)、尿管(ureter)、膀胱(vesica urinaria)、尿道(urethra)などを含む臓器群です。この系統は尿の生成と排出を担当する器官系であり、排泄器(organum excretorium)とも呼ばれます(Gray and Williams, 2020)。

腎臓の解剖学的特徴

解剖学的には、腎臓は後腹膜腔の両側に位置し、腰椎1〜3番レベルに存在します。成人の腎臓は長さ約11cm、幅5〜6cm、厚さ3cmで、重量は120〜150gです(Moore et al., 2018)。右腎は肝臓の存在により左腎よりやや下方に位置しています。腎臓は強靭な腎被膜(capsula renalis)に覆われ、腎門(hilum renale)から血管、神経、尿管が出入りします。

腎臓の内部構造

腎臓の内部は皮質(cortex renalis)と髄質(medulla renalis)に分かれ、髄質は10〜18個の腎錐体(pyramides renales)から構成されています。ネフロン(nephron)は腎臓の機能単位であり、糸球体(glomerulus)と尿細管(tubulus renalis)から成り、腎臓1つあたり約100万個存在します(Standring, 2021)。

尿路系の構造

尿管は長さ約25〜30cmの管で、腎盂(pelvis renalis)から膀胱まで尿を運びます。膀胱三角(trigonum vesicae)において尿管は膀胱壁を斜めに貫通し、逆流防止弁の役割を果たします(Drake et al., 2019)。膀胱は骨盤腔内に位置する中空の筋性器官で、容量は約500mlです。

泌尿器系の生理学的機能

臨床的に重要な点として、泌尿器系は尿の生成と排出だけでなく、体液量、電解質バランス、酸塩基平衡の調節に重要な役割を果たします。腎臓はレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系を通じて血圧調節にも関与し、エリスロポエチン産生による赤血球生成促進、ビタミンDの活性化による骨代謝調節などの内分泌機能も有しています(Guyton and Hall, 2021)。

腎臓の排泄機能と血流

栄養素の代謝によって生じる窒素含有老廃物(尿素、尿酸、クレアチニンなど)は腎臓で濾過・再吸収・分泌のプロセスを経て最終的に尿として排泄されます。腎臓の血流量は心拍出量の約20〜25%(1,000〜1,200ml/分)を占め、その高い血流は効率的な濾過を可能にしています(Boron and Boulpaep, 2017)。

参考文献