胸膜頂 Cupula pleurae
胸膜頂(頚胸膜)は、肺尖部を覆う胸膜の円蓋状の上端部であり、第1肋骨の上縁より約2-3cm上方まで伸展する (Gray and Carter, 2021)。この構造は、頚部から胸腔への移行部に位置し、肺尖を保護する重要な役割を担っている (Standring, 2023)。
解剖学的特徴
- 頚動脈鞘、腕神経叢、鎖骨下動静脈と密接な位置関係にある (Moore et al., 2022)。
- 前斜角筋、中斜角筋、および第1肋骨によって支持されている (Standring, 2023)。
- 星状神経節(頚胸神経節)が胸膜頂の後外側に位置している (Netter, 2023)。
- 胸膜頂は壁側胸膜の一部であり、内胸筋膜によって補強されている (Ellis et al., 2022)。
臨床的意義
- 胸部手術や頚部手術時の重要なランドマークとなる (Skandalakis et al., 2024)。
- 気胸や胸膜炎の際に影響を受けやすい部位である (Kaplowitz and Morris, 2022)。
- 肺尖部腫瘍(Pancoast腫瘍)の進展経路として重要である (Kumar and Abbas, 2023)。
- 胸管損傷のリスクが高い領域である (Tubbs et al., 2021)。
- 硬膜外麻酔や腕神経叢ブロック施行時に考慮すべき解剖学的構造である (Miller et al., 2022)。
病理学的考察
- 結核性胸膜炎は胸膜頂に好発し、しばしば肺尖部に石灰化病変を残す (Hansell et al., 2023)。
- 胸膜頂の線維化は肺尖部の拘束性変化をもたらすことがある (Müller and Silva, 2021)。
- 頚部への放射線治療後に胸膜頂の線維化が生じることがある (Choi et al., 2022)。
画像診断
- 胸部X線写真では、第1肋骨上に投影される円蓋状の構造として確認できる (Webb et al., 2021)。
- CT検査では、頚部から胸部への移行部において明確に描出される (Prokop et al., 2022)。