


胸膜は肺を覆い、胸膜腔の壁を支える薄く透明な漿膜です (Gray, 2020; Standring, 2021)。胸膜は一層の扁平な中皮細胞からなる中皮層と、その下層の結合組織である胸内筋膜から構成されています (Moore et al., 2022)。
胸腔は胸郭内の空間で、腹部の腹腔に対応する体腔です (Gray, 2020)。心臓を含む縦隔と肺が胸腔の大部分を占めていますが、肺や縦隔と胸壁の間にはわずかな空間があり、これが胸膜腔です (Netter, 2019)。胸膜腔は縦隔によって左右に分けられ、少量の漿液(約5-15ml)が含まれています (Standring, 2021)。この漿液は胸膜表面の摩擦を軽減し、呼吸運動を円滑にします。胸膜腔の存在により、肺の表面は胸壁から自由に動くことができ、呼吸時の肺の拡張・収縮が可能となります (Drake et al., 2020)。
胸膜はその位置と機能により以下のように分類されます (Gray, 2020; Moore et al., 2022):
胸膜の深層には胸内筋膜と呼ばれる結合組織層が存在します (Gray, 2020)。胸膜頂部の胸内筋膜はやや厚く、特に胸膜上膜(Sibson筋膜)と呼ばれ、胸膜頂を補強しています (Moore et al., 2022)。また、横隔胸膜部の胸内筋膜は横隔胸膜筋膜と呼ばれ、横隔膜と胸膜を分離しています (Standring, 2021)。
胸膜の折り返しで生じる狭い潜在的空間を胸膜洞といい、正常な呼吸時には肺が完全には入り込まない部分です (Netter, 2019)。以下のように分類されます:
肺門部から下方で肺胸膜が縦隔胸膜に移行する部分を肺間膜といい、二重の胸膜層からなる膜状構造です (Moore et al., 2022)。肺間膜は肺門を通過する気管支、血管、神経、リンパ管を包んでいます (Netter, 2019)。