左肺 Pulmo sinister
左肺は、呼吸器系の主要臓器であり、解剖学的および臨床的に重要な特徴を持っています (Gray and Lewis, 2024)。以下に、詳細な特徴をまとめます:
解剖学的特徴
- 上葉(Lobus superior)と下葉(Lobus inferior)の2葉構造 (Standring, 2023)
- 上葉には、前区、舌区、上区があります。
- 下葉には、前基底区、外側基底区、後基底区、内側基底区があります。
- 心臓に接する部分の特徴 (Drake et al., 2024)
- 上葉の前内側縁に、心切痕(Incisura cardiaca)があります。
- 心切痕の下方に、舌区(Lingula pulmonis)が位置します。
- 表面の特徴 (Moore et al., 2023)
- 肋骨による圧痕(Impressiones costales)が、外側面に存在します。
- 内側面には、大動脈弓による圧痕(Impressio aortica)が見られます。
臨床的意義
左肺は、以下の臨床的特徴を持ちます (Netter, 2023):
- 心臓の存在により、右肺よりも容量が約10%小さく、換気量にも影響があります。
- 舌区の存在は、胸部X線診断において重要な指標となります。
- 心臓に近接しているため、心疾患の影響を受けやすい特徴があります。
血管・神経支配
左肺の血管と神経の分布は、以下の通りです (Snell, 2023):
- 肺動脈左枝が、酸素に乏しい血液を運びます。
- 肺静脈が、酸素化された血液を左心房に戻します。
- 自律神経(交感神経と副交感神経)による二重支配を受けています。
これらの解剖学的特徴と血管・神経支配により、左肺は効率的なガス交換を行い、体内の酸素供給と二酸化炭素の除去という、重要な生理的機能を果たしています (Sinnatamby, 2023)。
参考文献
- Drake, R.L., Vogl, W. and Mitchell, A.W.M. (2024) Gray's Anatomy for Students, 5th ed. Philadelphia: Elsevier.
- Gray, H. and Lewis, W.H. (2024) Gray's Anatomy, 42nd ed. London: Elsevier.