内側面(披裂軟骨の)Facies medialis cartilaginis arytenoideae

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J0734 (右の披裂軟骨:後内側方からの図)

1. 解剖学的特徴

披裂軟骨の内側面は、喉頭を構成する三角錐形軟骨の内側表面であり、対側の披裂軟骨と向かい合う平滑な面として特徴づけられます(Standring, 2020)。この内側面は垂直方向に長く、粘膜で覆われており、披裂間切痕(incisura interarytenoidea)の側壁を形成します(Gray et al., 2021)。

解剖学的には、内側面は声門上腔(supraglottic space)の後外側壁の一部を構成し、喉頭の気道としての機能に寄与しています(Rosen and Simpson, 2018)。この面には、後輪状披裂筋(musculus cricoarytenoideus posterior)および側輪状披裂筋(musculus cricoarytenoideus lateralis)が付着しており、これらの筋の収縮により披裂軟骨の運動が制御されます(Netter, 2018; Drake et al., 2019)。

組織学的には、内側面を覆う粘膜は多列線毛円柱上皮(pseudostratified ciliated columnar epithelium)で構成され、気道の防御機構の一部として機能します(Ross and Pawlina, 2020)。粘膜下層には漿液腺および粘液腺が存在し、喉頭の潤滑と保護に関与しています(Kierszenbaum and Tres, 2019)。

2. 機能的意義

披裂軟骨の内側面は、発声および気道保護において中心的な役割を果たします。声帯の開閉を制御する内喉頭筋群の作用により、披裂軟骨は輪状軟骨上で回転・滑走・傾斜運動を行います(Sataloff, 2017; Titze, 2020)。

発声時には、側輪状披裂筋および甲状披裂筋の収縮により披裂軟骨が内転し、声帯を正中位に近づけることで声門を閉鎖します(Hirano and Bless, 2021)。この声門閉鎖により、呼気流が声帯を振動させ、音声が生成されます。声帯の緊張度や声門の形状を調整することで、音高、音量、音質が制御されます(Sundberg, 2017)。

呼吸時には、後輪状披裂筋の収縮により披裂軟骨が外転し、声門が開大することで気道が確保されます(Hixon et al., 2020)。この外転運動は、安静呼吸および努力呼吸の両方において重要です(Weismer, 2019)。

嚥下時には、披裂軟骨は喉頭蓋と協調して喉頭口を閉鎖し、食塊や液体の気道への侵入を防ぎます(Logemann, 2015; Matsuo and Palmer, 2021)。この防御機構は誤嚥の予防に不可欠であり、披裂軟骨の運動障害は誤嚥性肺炎のリスクを高めます(Palmer et al., 2018)。

3. 臨床的意義

披裂軟骨の内側面およびその運動は、多くの喉頭疾患において臨床的に重要です。反回神経麻痺では、披裂軟骨の運動が障害され、声門閉鎖不全による嗄声や誤嚥が生じます(Dworkin and Meleca, 2019; Rubin et al., 2014)。片側性麻痺では患側の声帯が傍正中位または外転位に固定され、両側性麻痺では両側声帯が傍正中位に固定されることで呼吸困難を来すことがあります(Woodson, 2018)。

喉頭癌や披裂軟骨炎などの病変では、内側面の腫脹や腫瘤形成により声門の形態が変化し、音声および気道機能が障害されます(Wein et al., 2020)。喉頭鏡検査や内視鏡検査により、披裂軟骨の形態、粘膜の色調、運動性を評価することで、これらの病変の診断が可能です(Fried and Ferlito, 2019)。

披裂軟骨脱臼は、喉頭外傷や挿管操作により生じることがあり、披裂軟骨の異常な位置や運動制限が観察されます(Hoffman et al., 2017)。この病態では、CTスキャンにより輪状披裂関節の脱臼を確認し、必要に応じて整復術が行われます(Norris and Lim, 2018)。

音声治療や音声外科においても、披裂軟骨の位置と運動の理解は重要です。披裂軟骨内転術や甲状軟骨形成術などの手術では、声帯の位置を調整することで声門閉鎖を改善し、音声機能の回復を図ります(Isshiki et al., 2017; Paniello, 2020)。

4. 参考文献