上甲状切痕 Incisura thyroidea superior

J0730 (甲状軟骨と輪状軟骨:前方からの図)

J0738 (喉頭筋:右側からの図)
定義
上甲状切痕は、甲状軟骨の右板と左板が前正中で会合する上縁部に形成される深いV字型またはU字型の切痕である。この構造は喉頭の重要な解剖学的指標となる。
解剖学的特徴
- 甲状軟骨の前面上部、正中線上に位置する
- U字型の凹みを形成している
- 甲状舌骨膜(thyrohyoid membrane)の付着部となり、舌骨と甲状軟骨を連結する重要な構造である
- 外表から触診可能な解剖学的ランドマークである
発生学的背景
甲状軟骨は胎生期の第4および第5咽頭弓に由来する。左右の軟骨板が前方で癒合する過程において、上部が完全に融合せずに残存した部分が上甲状切痕を形成する。
臨床的意義
1. 気道確保における重要性
- 輪状甲状靭帯切開術(cricothyrotomy)における重要な解剖学的指標となる
- 緊急気道確保が必要な際、上甲状切痕と輪状軟骨の間に存在する輪状甲状靭帯(cricothyroid ligament)を切開して気道を確保する
- この手技は、気管挿管が困難または不可能な緊急状況下で生命を救う重要な処置である
2. 外科手術における意義
- 甲状腺手術において、甲状軟骨を同定する際の重要な解剖学的指標となる
- 喉頭手術や頸部手術における解剖学的参照点として利用される
3. 外傷評価