喉頭は咽頭と気管の間に位置し、気道の一部を形成しながら、発声器としての重要な役割を果たしています(平山, 1961)。第4から第6頚椎の高さに位置する正中構造物で、成人男性では垂直方向に約44mm、前後径は約36mm、横径は約43mmです。
1. 基本構造と位置
解剖学的位置関係:喉頭は前方と外側を皮膚と舌骨下筋群(胸骨舌骨筋、胸骨甲状筋、甲状舌骨筋など)に覆われています。後方は咽頭の喉頭部と接し、上部は咽頭腔に突出し喉頭口(aditus laryngis)を形成しています。下方は気管へと連続しています(四家, 1981)。
2. 構成要素
3. 喉頭の空間構造
喉頭腔:喉頭腔は声帯ヒダにより上喉頭腔(前庭)、中喉頭腔(声門)、下喉頭腔の3部に分けられます。声門は最も狭く、成人男性で約23mm、女性で約17mmの前後径があります(藤田, 1944)。前庭ヒダと声帯ヒダの間には喉頭室(モルガニ洞)があり、その上方に喉頭小嚢が存在します。
4. 神経支配と血管分布
神経支配:迷走神経の分枝である上喉頭神経(内枝は感覚、外枝は運動)と反回神経(主に運動)により支配されます(島袋, 1969)。反回神経麻痺は声帯の運動障害を引き起こし、嗄声や誤嚥の原因となります。上喉頭神経外枝は輪状甲状筋のみを支配し、高音発声に関与します。
血管分布:上甲状腺動脈と下甲状腺動脈から分枝する上喉頭動脈と下喉頭動脈により栄養されます。静脈は上・中・下甲状腺静脈に還流します。
5. 臨床的意義と発達的特徴
臨床的意義:喉頭は気道保護(誤嚥防止)、呼吸調節、発声という3つの重要な機能を担っています(古沢, 1980)。喉頭癌、声帯ポリープ、喉頭浮腫、声帯麻痺などの病態が生じ得ます(中井ら, 1999; 田中ら, 1991)。また、気管挿管や気管切開などの救命処置の重要な標的となります。小児では相対的に喉頭が高位にあり、かつ漏斗状であるため、成人とは異なる解剖学的・臨床的配慮が必要です(小河原, 1988; 森満ら, 1981)。
6. 参考文献