篩骨洞 Cellulae ethmoidales
篩骨洞は頭蓋前方部に位置する複雑な副鼻腔系の一部であり、小さな気腔(蜂巣)が集合した構造を持ちます。解剖学的特徴と臨床的重要性について以下に詳述します。

J0094 (頭蓋骨の前頭断、後方からの図)

J0408 (右眼瞼の筋:背方からの図)
1. 解剖学的特徴
1.1 基本構造と位置
- 篩骨洞は篩骨蜂巣(ethmoidal cells)とも呼ばれ、多数の小気腔からなる蜂巣状構造を呈します(Terrier et al., 2009)。
- 篩骨迷路(ethmoidal labyrinth)を形成し、篩板(cribriform plate)の外側、眼窩内側壁(lamina papyracea)と鼻腔外側壁の間に位置します。
- 前頭骨、上顎骨、蝶形骨、涙骨、口蓋骨にまで拡張することがあり、これらの骨と密接に関連した複雑な三次元構造を示します(Rae et al., 2003)。
- 蜂巣の数、大きさ、配置には著しい個人差があり、3個から18個以上まで変動します(Stammberger, 2020)。
1.2 解剖学的分類
篩骨洞は基板(basal lamella)を基準として、解剖学的に3つの部分に分類されます(Lund et al., 2014):
- 前篩骨蜂巣(anterior ethmoidal cells):
- 篩骨漏斗(infundibulum ethmoidale)を介して中鼻道に開口します。
- 前頭洞、前頭陥凹(frontal recess)、涙嚢に近接し、これらの構造の排泄路に影響を与えます。
- 篩骨胞(bulla ethmoidalis)より前方に位置します。
- 中篩骨蜂巣(middle ethmoidal cells):
- 篩骨胞を含み、中鼻甲介の基板の領域に相当します。
- 主に中鼻道に開口しますが、一部は前頭陥凹に関与します。
- 最も大きく目立つ蜂巣であることが多いです。
- 後篩骨蜂巣(posterior ethmoidal cells):
- 上鼻道に開口し、基板の後方に位置します。
- 蝶形骨洞前壁、視神経管(optic canal)、眼窩尖部に近接します。
- Onodi蜂巣(sphenoethmoidal cell)として蝶形骨洞の上外側に拡張することがあり、視神経を取り囲む可能性があります(Thanaviratananich et al., 2003)。
1.3 微細構造と生理機能
- 蜂巣間の隔壁は極めて薄く(0.1-0.2mm)、骨欠損部も存在することがあります(Stammberger and Kennedy, 2016)。
- 粘膜は偽重層線毛円柱上皮(pseudostratified ciliated columnar epithelium)で覆われ、杯細胞(goblet cells)が粘液を分泌します。
- 粘液線毛クリアランス機構により、線毛が協調的に運動して粘液と捕捉された異物を自然口に向けて輸送します(Cohen and Kennedy, 2005)。
- 各蜂巣の自然口(ostium)は狭小で、炎症や浮腫により容易に閉塞します。
1.4 血管供給と神経支配