上鼻道 Meatus nasi superior
1. 解剖学的特徴
上鼻道は鼻腔側壁に位置する狭小な通路構造であり、以下の詳細な解剖学的特徴を有します(Drake et al., 2020; Standring, 2021):
1.1 位置と境界
- 上鼻道は上鼻甲介(concha nasalis superior)の下面と中鼻甲介(concha nasalis media)の上面の間に形成される狭い間隙である。
- 鼻腔の後方1/3に位置し、前後長は約2〜2.5cmである。前鼻孔から直接観察することは困難であり、鼻内視鏡検査が必要となる(Stammberger and Kennedy, 2017)。
- 内側は鼻中隔、外側は篩骨迷路の内側壁、上方は篩骨天蓋、下方は中鼻甲介の付着部により境界される。
1.2 副鼻腔との関連
- 後篩骨洞(cellulae ethmoidales posteriores)の開口部が上鼻道の前上方に位置する。後篩骨洞は通常2〜4個の気房からなり、その排泄口は上鼻道に開口する(Moore et al., 2022)。
- 蝶形骨洞(sinus sphenoidalis)の開口部は上鼻道の後端、蝶篩陥凹(recessus sphenoethmoidalis)に近接している。蝶形骨洞の自然口は通常、上鼻道よりもやや上方の蝶篩陥凹に開口するが、解剖学的変異により上鼻道に開口する場合もある(Flint et al., 2021)。
1.3 組織学的構造
- 上鼻道は多列線毛円柱上皮(pseudostratified ciliated columnar epithelium)で被覆されており、上皮の厚さは約0.2〜0.5mmである。
- 上皮には杯細胞(goblet cells)が豊富に分布し、粘液分泌を行う。粘膜固有層には漿液腺および粘液腺が存在し、これらの分泌物が鼻腔の湿潤環境を維持する(Kennedy et al., 2018)。
- 粘膜下層には豊富な血管網が発達しており、特に静脈洞様構造を有する海綿状組織が存在する。これにより効率的な熱交換と加温機能が実現される(Netter, 2019)。
- 線毛の打動運動は後方から前方への一方向性を示し、粘液繊毛クリアランス機構の一部を構成する。線毛の打動頻度は約10〜15Hz(拍動/秒)である(Yanagisawa et al., 2019)。
1.4 血管支配と神経支配
- 動脈支配:蝶口蓋動脈(arteria sphenopalatina)の後外側鼻枝および後篩骨動脈(arteria ethmoidalis posterior)から血液供給を受ける(Standring, 2021)。
- 静脈還流:蝶口蓋静脈を経て翼突筋静脈叢へ、および篩骨静脈を経て海綿静脈洞へ流入する。
- 神経支配:三叉神経第2枝(上顎神経)の後上鼻枝および嗅神経の終末枝により知覚神経支配を受ける。自律神経支配は翼口蓋神経節からの副交感神経線維と頸部交感神経節からの交感神経線維により行われる(Moore et al., 2022)。
2. 生理学的機能