鼻粘膜 Tunica mucosa nasi

鼻粘膜は、鼻腔内面を覆う特殊な粘膜組織で、鼻の天蓋の皮膚、鼻咽頭、副鼻腔、鼻涙管などの粘膜と連続しています(Gray et al., 2020)。解剖学的に2つの主要領域に区分されます:

  1. 嗅部(Regio olfactoria): 鼻腔上部に位置し、面積は約2.5cm²程度と限られています。嗅神経(第I脳神経)の末端である嗅細胞を含む嗅上皮で覆われており、嗅覚を担当します(Standring, 2021)。黄褐色を呈し、嗅細胞、支持細胞、基底細胞から構成されています。
  2. 呼吸部(Regio respiratoria): 鼻腔の大部分を占め、多列線毛円柱上皮で覆われています。粘液産生細胞(杯細胞)が豊富で、吸入された空気の加湿、加温、浄化を行います(Moore et al., 2019)。

鼻粘膜の特徴として、豊富な血管網(特に鼻甲介部分)を有し、粘膜下には漿液腺と粘液腺が存在します(Netter, 2018)。また、リンパ組織(NALT:Nasal-Associated Lymphoid Tissue)も発達しており、上気道の免疫防御に重要な役割を果たします(Brandtzaeg, 2011)。

臨床的意義

  1. 鼻粘膜は気道の最初の防御線として機能し、病原体や異物の侵入を防ぎます(Fokkens et al., 2020)
  2. アレルギー性鼻炎、鼻ポリープ、鼻出血(特にキーゼルバッハ部位)などの一般的な病態が発生する部位です(Bousquet et al., 2019)
  3. 鼻腔粘膜は薬物送達経路として重要で、鼻粘膜からの吸収を利用した薬剤が開発されています(Erdő et al., 2018)
  4. 嗅覚障害は神経疾患(パーキンソン病など)や新型コロナウイルス感染症の早期症状として注目されています(Lechien et al., 2020)

参考文献