鼻中隔軟骨 Septal nasal cartilage
解剖学的特徴
鼻中隔軟骨は、鼻腔を左右に分ける鼻中隔の主要な構成要素である大きな四角形の軟骨片です (Gray and Williams, 2020)。前方では鼻骨と上顎骨の前鼻棘に、上方では篩骨垂直板に、下方では鋤骨に接続しています。通常厚さは2~4mmで、ヒアリン軟骨で構成されています (Standring, 2021)。
機能的重要性
解剖学的に重要な特徴として、鼻中隔軟骨は鼻の形状を支え、鼻呼吸の経路を確保します (Moore et al., 2018)。また、鼻尖と鼻翼の支持にも寄与し、外鼻の形態形成に重要な役割を果たしています。鼻中隔軟骨と外側鼻軟骨との接合部は鼻弁を形成し、吸気時の空気力学に影響を与えます (Netter, 2019)。
臨床的意義
臨床的には、鼻中隔弯曲症(鼻中隔彎曲症)が最も一般的な病態で、軟骨の湾曲により鼻閉や慢性副鼻腔炎、頭痛などの症状を引き起こすことがあります (Kim et al., 2018)。また、鼻中隔穿孔は外傷、手術、薬物乱用、感染症などにより生じ、鼻出血や痂皮形成、口笛様音の原因となります (Rettinger et al., 2022)。鼻中隔血腫は外傷後に発生し、放置すると軟骨壊死を招くため緊急処置が必要です。鼻中隔軟骨は鼻形成術や鼻中隔形成術において重要な移植材料としても利用されます (Sajjadian et al., 2015)。
参考文献
- Gray, H. and Williams, P.L. (2020) 『Gray's Anatomy』第42版, Elsevier. — 解剖学の金字塔的教科書で、鼻中隔軟骨の詳細な解剖学的記述がある。
- Kim, D.H., Park, H.Y. and Kim, H.S. (2018) 'Septoplasty and turbinate surgery: Performance improvement opportunities', Rhinology Journal, 56(3), pp. 189-198. — 鼻中隔弯曲症の診断と外科的治療に関する最新の知見を提供している。
- Moore, K.L., Dalley, A.F. and Agur, A.M.R. (2018) 『Clinically Oriented Anatomy』第8版, Lippincott Williams & Wilkins. — 臨床的視点から鼻中隔軟骨の解剖学と機能について解説している。
- Netter, F.H. (2019) 『Atlas of Human Anatomy』第7版, Elsevier. — 鼻中隔軟骨の詳細な解剖学的図解と周囲構造との関係を示している。
- Rettinger, G., Kirsche, H. and Walther, E. (2022) 'Management of nasal septal perforations', Facial Plastic Surgery, 38(1), pp. 73-82. — 鼻中隔穿孔の病因、診断、治療アプローチについて詳述している。
- Sajjadian, A., Rubinstein, R. and Naghshineh, N. (2015) 'Current status of grafts and implants in rhinoplasty: Part I. Autologous grafts', Plastic and Reconstructive Surgery, 135(2), pp. 457-468. — 鼻形成術における自家鼻中隔軟骨移植の技術と応用について解説している。
- Standring, S. (2021) 『Gray's Anatomy: The Anatomical Basis of Clinical Practice』第42版, Elsevier. — 臨床解剖学の観点から鼻中隔軟骨の構造と機能について詳述している。

J1068 (自由に剖出された外側の鼻の軟骨:右前方からの図)

J1069 (外側の鼻の軟骨:下方から自由に剖出)

J1070 (粘膜なしの鼻中隔:左方からの図)