前部(肝臓の横隔面の)Pars anterior faciei diaphragmaticae hepatis

解剖学的特徴

肝臓の横隔面の前部は、横隔膜に接する肝臓表面の前方部分です。解剖学的には、肝臓の横隔面(facies diaphragmatica hepatis)は主に右葉と尾状葉に存在し、横隔膜の下面に密着しています(Standring, 2020)。この前部は、特に肝臓右葉の前上部に位置し、横隔膜の形状に合わせて凸面を形成しています。

構造と支持機構

この領域は横隔膜直下に位置するため、横隔膜の収縮・弛緩に伴って常に上下運動を行っています。また、冠状靭帯(ligamentum coronarium hepatis)や三角靭帯(ligamentum triangulare dextrum et sinistrum)により横隔膜に固定されています(Moore et al., 2018)。これらの靭帯は肝臓の位置を維持する上で重要な役割を果たしています。

臨床的意義

臨床的意義としては、この部位の損傷は横隔膜損傷を伴うことが多く、胸腔内への出血や横隔膜ヘルニアの原因となりえます(Netter, 2019)。また、この領域は超音波検査やCTスキャンで肝臓を評価する際の重要な解剖学的ランドマークとなります。横隔面の前部に病変(腫瘍や膿瘍など)が生じた場合、横隔膜を介して胸部症状(胸痛や呼吸困難)を引き起こすことがあります(Paulsen and Waschke, 2018)。

参考文献

J708.png

J0708 (腹膜の折り返し部分と肝臓:前方からの図)