幽門 Pylorus

J0635 (消化管のやや模式的な概観図)

J0686 (胃ほとんど空:正面からの図)

J0687 (胃の筋層(浅層):前方からの図)

J0688 (胃の筋層:前方から見た中層と深層)

J0689 (胃の内壁:前壁が切断されて、後壁の粘膜が見える図)
幽門は、胃の下部と十二指腸の境界に位置する筋肉性の構造物であり、強力な輪状筋層(幽門括約筋)を備えています(Gray and Lewis, 2020)。解剖学的には、胃の幽門部(pars pylorica)の末端に位置し、胃内容物の十二指腸への排出を精密に調節する重要な役割を担っています(Standring, 2021)。幽門括約筋は、胃壁の輪状筋層が特に肥厚したもので、厚さは約5mmに達し、消化管における最も強力な括約筋の一つとされています(Moore et al., 2022)。
解剖学的特徴
位置と形態
- 空腹時の幽門は、胃の背側で正中線から1-2cm右側に位置し、第1腰椎の右前方に存在します(Standring, 2021)。胃の充満状態や体位によって位置が変化することが知られています(Sinnatamby, 2023)。
- 外観上、幽門部は胃と十二指腸の移行部として、わずかなくびれ(幽門輪、pyloric ring)を形成しており、触診や画像診断で識別可能です(Netter, 2019)。
筋層構造
- 幽門括約筋(musculus sphincter pylori)は、胃壁の輪状筋層が局所的に肥厚したもので、厚さ約5mmの強力な括約筋を形成しています(Moore et al., 2022)。この筋層は、胃内容物の十二指腸への排出を制御する主要な構造です(Drake et al., 2020)。
- 縦走筋層は幽門部で薄くなり、十二指腸へと移行します。この筋層配置により、幽門の開閉運動が効率的に行われます(Clemente, 2021)。
- 筋層間には、アウエルバッハ神経叢(筋層間神経叢)が存在し、括約筋の協調運動を調整しています(Boron and Boulpaep, 2022)。
粘膜構造
- 幽門部の粘膜は、胃粘膜から十二指腸粘膜へと急激に移行し、明瞭な組織学的境界を形成しています(Sinnatamby, 2023)。この境界部では、粘膜の色調や厚さが明らかに変化します(Kiernan, 2021)。
- 幽門腺(glandulae pyloricae)は主に粘液を分泌し、胃酸から幽門部粘膜を保護する役割を果たしています(Ross and Pawlina, 2020)。
- 十二指腸側では、ブルンナー腺(duodenal glands)が出現し、アルカリ性粘液を分泌して胃酸を中和します(Young et al., 2021)。
血管支配
- 幽門部への動脈血供給は、主に右胃動脈(arteria gastrica dextra)と右胃大網動脈(arteria gastroomentalis dextra)からの分枝によって行われます(Netter, 2019)。
- 静脈血は、右胃静脈と右胃大網静脈を経て門脈系へと還流します(Drake et al., 2020)。
- 豊富な血管網により、幽門部は高い代謝活動と修復能力を維持しています(Standring, 2021)。
神経支配