糸状乳頭 Papillae filiformes
1. 基本的特徴
糸状乳頭は舌体の背面全域にわたって密在する円錐状の乳頭です。舌の表面に最も多く存在する乳頭として特徴づけられ、以下の形態的特徴があります(Ross and Pawlina, 2019):
- 分布:舌背の前方2/3の領域に特に密集
- 密度:成人の舌では約200-300/cm²
- 高さ:0.5-1mm程度
- 配列:前方に傾斜
2. 組織学的構造
糸状乳頭の微細構造には以下の特徴があります(Mescher, 2018):
- 基本構成:固有層の突起とそれを覆う重層扁平上皮
- 上皮特性:著明な角化を示し、生体内では白色を呈する
- 細胞間結合:デスモソームによる結合が豊富
- 角化層:ケラチン線維が密に充填
- 血管・神経:固有層には毛細血管網と自由神経終末が豊富
3. 機能的役割
- 機械的機能:舌背表面にザラザラとした質感を与え、食物の移動や操作を補助します(Nanci, 2017)
- 感覚機能:豊富な神経終末により触覚および圧覚を伝達します(Iwasaki, 2002)
- 防御機能:角化した上皮は物理的バリアとして機能し、微生物の侵入や化学的刺激から舌組織を保護します(Squier and Kremer, 2001)
4. 臨床的意義
糸状乳頭は様々な口腔内疾患の診断指標となります(Reamy et al., 2010):