舌根 Radix linguae

J0639 (頭頚部の正中矢状断:左側からの右半分の図)

J0659 (舌:上方からの図)

J0675 (右の口蓋扁桃、左と発達度が異なります)
J0676 (右の口蓋扁桃、左と発達度が異なります)

J0678 (咽頭:後方からの図)

J0680 (咽頭と喉頭の筋:後方から見た図)

J0742 (静かに息を吸うときの喉頭の喉頭鏡像)

J0743 (喉頭口と喉頭腔:上方からの図)
舌根(Radix linguae)は、舌の後方1/3を占める部分で、喉頭蓋軟骨(cartilago epiglottica)の前面に位置しています(Standring, 2021)。解剖学的には舌骨(os hyoideum)の上に位置し、舌体(corpus linguae)とは舌盲孔(foramen caecum linguae)と舌V字溝(sulcus terminalis)によって区別されます(Moore et al., 2018)。舌根は口腔と咽頭の境界領域に位置し、嚥下、発声、気道保護において重要な役割を果たす解剖学的構造です(Netter, 2019)。
解剖学的構造
1. 粘膜構造
舌根の粘膜は重層扁平上皮(stratified squamous epithelium)で覆われており、舌体の粘膜よりも厚い構造を持ちます(Ross and Pawlina, 2020)。粘膜下層には多数のリンパ組織である舌扁桃(tonsilla lingualis)が点在し、ワルダイエル咽頭輪(Waldeyer's ring)の一部を構成しています(Mescher, 2021)。舌扁桃は生後から徐童期にかけて発達し、免疫学的防御機構に関与します(Perry and Whyte, 2022)。
2. 筋組織
舌根には複数の外舌筋が付着し、舌の位置と形状を調整しています(Drake et al., 2020)。主要な筋肉には以下が含まれます:
- 舌骨舌筋(m. hyoglossus):舌骨体から起始し、舌根に挿入して舌を後下方に引く作用を持ちます(Standring, 2021)。
- 茎突舌筋(m. styloglossus):茎状突起から起始し、舌を後上方に引き上げます(Moore et al., 2018)。
- 口蓋舌筋(m. palatoglossus):軟口蓋から舌根外側縁に走行し、口峡を狭める作用を持ちます(Netter, 2019)。
- 舌根にはまた、内舌筋である上縦舌筋(m. longitudinalis superior)と下縦舌筋(m. longitudinalis inferior)の線維も分布し、舌の形状変化に寄与します(Takemoto, 2021)。
3. 神経支配
舌根の神経支配は複雑で、複数の脳神経が関与します(Snell, 2020):
- 舌咽神経(n. glossopharyngeus, CN IX):舌根の一般体性感覚と味覚(特に苦味受容)の両方を支配します(Kandel et al., 2021)。舌咽神経の舌枝は舌根粘膜に広く分布し、嚥下反射の求心性経路として機能します(Miller, 2020)。
- 迷走神経(n. vagus, CN X):上喉頭神経(n. laryngeus superior)の内枝が舌根の最後部と喉頭蓋谷(vallecula epiglottica)の感覚を支配します(Gray et al., 2021)。
- 舌下神経(n. hypoglossus, CN XII):舌根の筋肉の運動神経支配を担当します(ただし口蓋舌筋は迷走神経支配)(Kiernan, 2020)。
4. 血管分布
舌根の動脈血供給は主に外頸動脈(a. carotis externa)の前枝である舌動脈(a. lingualis)から行われます(Sinnatamby, 2018):
- 舌背動脈(a. dorsalis linguae):舌根の主要な栄養血管で、舌扁桃への血液供給も担います(Standring, 2021)。