歯槽 Alveolus dentalis

J0111 (19cm長胎児(5ヶ月の初め)の口蓋:下方からの図)
解剖学的構造
歯槽(しそう、Alveolus dentalis)は、上顎骨および下顎骨の歯槽突起内に存在する円錐形または円筒形の骨性の空洞で、歯根を収容し支持する重要な解剖学的構造です(Nanci, 2018)。歯槽骨(alveolar bone)とも呼ばれ、歯周組織の主要な構成要素の一つです(Berkovitz et al., 2017)。
構造的特徴:
- 各歯槽は個々の歯に対応しており、歯根の形態に適合した形状を持ちます。単根歯では単一の空洞、多根歯では複数の空洞が歯根数に応じて形成されます(Standring, 2020)。
- 歯槽壁は緻密骨から構成され、特に歯根に面する内壁は固有歯槽骨(lamina dura)と呼ばれる薄い緻密骨層で、X線写真では白い線として観察されます(White & Pharoah, 2014)。
- 複数の歯槽が連続して配列することで歯槽弓(alveolar arch)を形成し、上顎では上歯槽弓、下顎では下歯槽弓を構成します(Berkovitz et al., 2017)。
- 歯槽間には歯槽間中隔(interdental septum)が存在し、隣接する歯を分離しています。また、多根歯の歯根間には歯根間中隔(interradicular septum)が形成されます(Nanci, 2018)。
- 歯槽の開口部周囲には歯槽縁(alveolar crest)があり、この部分は歯肉線維と密接に関係しています(Lindhe et al., 2015)。
組織学的構成:
- 固有歯槽骨(bundle bone):歯根膜線維(Sharpey線維)が埋入する緻密骨層(Nanci, 2018)
- 支持歯槽骨:固有歯槽骨を取り囲む海綿骨および緻密骨から構成(Berkovitz et al., 2017)
- 歯根膜:歯根と歯槽骨の間に存在する結合組織で、厚さ約0.15-0.38mm(Berkovitz et al., 2017)
臨床的意義
歯周病との関連:
- 歯周炎では歯槽骨の吸収が進行し、歯の支持組織が失われます。X線検査により歯槽骨吸収の程度を評価することが可能です(Lindhe et al., 2015)。
- 歯槽骨吸収は水平性吸収と垂直性吸収に分類され、その程度により歯周病の重症度が判定されます(Newman et al., 2018)。
- 歯槽骨の健康状態は歯の長期的予後に直接影響を及ぼします(Lindhe et al., 2015)。