頬腺 Glandulae buccales

1. 解剖学的特徴

頬腺は口腔の重要な小唾液腺であり、口唇腺の連続部分として位置づけられています。組織学的には口唇腺と類似しており、主に粘液性腺房から構成される純粘液腺です(Tandler et al., 1994)。これらの腺は唾液の分泌を通じて口腔内の湿潤環境の維持、初期消化、および口腔粘膜の保護に寄与しています。

2. 位置と分布

解剖学的には、頬腺は頬粘膜の深層に位置し、頬筋の外側表面に分布しています。小林(1958)の研究によれば、頬腺は耳下腺管(ステノン管)を基準に前部と後部に区分されます。前部頬腺は上唇部の口唇腺の後方に存在し、後部頬腺は耳下腺管の後方に位置しています。Hand et al.(1999)によると、これらの腺の導管は頬粘膜を貫通して口腔内に開口しています。

3. 臨床的意義

臨床的には、頬腺は口腔内の粘液分泌において重要な役割を果たしており、唾液分泌低下(口腔乾燥症)の症例では機能不全を起こすことがあります(Eliasson and Carlén, 2010)。また、頬腺は頬粘膜下の粘液嚢胞(粘液瘤)の発生部位となることがあり、口腔外科的処置の対象となることもあります(Jensen, 2000)。放射線治療後の唾液腺障害においても、大唾液腺と共に影響を受けることが知られています(Vissink et al., 2003)。

4. 参考文献

J638.png

J0638 (口唇線と頬腺:前方からの図)

日本人のからだ(島田和幸 2000)によると