硬口蓋は、口腔上部にある骨性構造で、以下のような特徴を持ちます:
硬口蓋は口腔の重要な構造で、咀嚼や発声などの機能に不可欠な役割を果たしています。
J0357 (頭蓋骨:右左方向からのX線像、軸線は右の外耳道の少し上から入ります)
日本人のからだ(島田和幸 2000)によると
硬口蓋部の基礎は骨口蓋で、これは上顎骨の口蓋突起と口蓋骨の水平板が形成します。骨口蓋を覆う口蓋粘膜は厚く、骨膜に密着しており、上皮層は角化して淡赤色を呈しますが、軟口蓋に近づくにつれて濃赤色になります。この粘膜は前方と側方で歯肉粘膜に移行します。骨の正中口蓋縫合に相当する部位では、粘膜の表面に縦に走る隆起として口蓋縫線が存在します。
口蓋縫線の形態については山崎(1962)の報告があり、縫線が後部1/5で2分されるものが40.3%、前方4/5が消失し後部1/5で2分されるものが16.5%、後部1/3で2分されるものが14.6%、前方2/3が消失し後部1/3がY型のものが12.1%、前方2/3が消失し後部1/3が1本のものが7.2%、消失しているものが5.5%、全体が1本になっているものが3.6%であると報告しています。
口蓋縫線の前端で、中切歯間の後に相当する箇所には切歯乳頭という小さな隆起が存在します。切歯乳頭の大きさは、長さ6.7mm、幅4.8mmで、形態はLysell(1955)の分類に基づく山崎(1962)の報告では、梨子型が127例中72例と最も多く、次いで三角型が28例、卵型が16例、長狭型が7例、円型が3例、焔型が1例であるとされています。
口蓋縫線の前方よりの部位では、その両側に数本の横走する隆起、すなわち横口蓋ヒダが見られます。成人の横口蓋ヒダの形態については山崎(1962)が報告し、後方への広がりは上顎第2小臼歯までのものが182例(51.6%)、上顎第2小臼歯と第1大臼歯との間のものが79例(22.4%)、上顎第1小臼歯と第2小臼歯との間のものが45例(12.7%)、第1大臼歯部までのものが25例(7.1%)、第1小臼歯部までのものが22例(6.2%)であると報告しています。
口蓋粘膜には、小唾液腺の一つである口蓋線が多数存在し、その導管の開口部は多くの小窩となります。その中で、硬口蓋と軟口蓋の境界部より口蓋縫線の両側に比較的大きな小窩として口蓋小窩が見られます。口蓋小窩の位置については、骨口蓋後縁との位置関係により分類され、上条(1965)の報告では、不明なものが最も多く29.0%、骨口蓋後縁の前方(1cm)以内が29.0%、骨口蓋後縁と一致するものが21.0%、骨口蓋後縁の後方が2.7%であったとされています。