輪状部[趾の線維鞘の]Pars anularis vaginae fibrosae digitorium pedis

J0517 (右足底の筋)
解剖学的構造
趾の線維鞘(vaginae fibrosae digitorum pedis)は、足趾の屈筋腱を骨に固定し、腱が効率的に滑走するための構造です(Standring, 2020)。線維鞘は以下の2つの部分から構成されます:
- 輪状部(pars anularis / fibrae anulares):環状に配列された強固な線維束で、腱を骨に密着させる主要な支持構造
- 十字部(pars cruciformis / fibrae cruciatae):交叉する線維束で、輪状部の間に位置し、可動性を保ちながら腱の滑走を誘導
輪状部は主に以下の解剖学的特徴を持ちます(Moore et al., 2017):
- 中足趾節関節(MTP関節)および趾節間関節(IP関節)の掌側面に沿って配置
- 関節の屈曲側で特に強固に発達し、深指屈筋腱および浅指屈筋腱を骨に固定
- 近位部では比較的厚く、遠位に向かって薄くなる傾向
- 腱鞘滑膜(synovial sheath)の外側を覆い、腱の滑走を助ける滑液腔を保護
機能的役割
- 腱の支持:屈筋腱が骨から浮き上がるのを防ぎ、腱の力学的効率を最大化(Netter, 2018)
- 弓弦現象(bowstringing)の防止:関節屈曲時に腱が掌側に突出するのを抑制
- 滑走機構の維持:腱鞘内で腱が円滑に滑走するための解剖学的トンネルを形成
- 栄養供給:腱鞘滑膜を介した腱への栄養供給路を保護
臨床的意義
1. 腱鞘炎(tenosynovitis)
線維鞘内の腱鞘滑膜に炎症が生じ、疼痛、腫脹、可動域制限をきたします。過度の使用、外傷、感染症(化膿性腱鞘炎)、リウマチ性疾患などが原因となります(Canale and Beaty, 2020)。