趾の線維鞘 Vaginae fibrosae digitorum pedis

J0517 (右足底の筋)

J0518 (右足底の筋(第2層))
解剖学的構造
趾の線維鞘(足指の線維性腱鞘)は、足趾の屈筋腱を保持し、腱の滑走を円滑にする重要な線維性構造です(Standring, 2020)。この構造は、趾骨の掌側面(足底側)に沿って存在し、長趾屈筋腱と長母趾屈筋腱を取り囲んでいます。
構造的特徴:
- 趾骨の両側縁および掌側面に強固に付着し、骨と線維鞘が一体となってオステオ線維性トンネル(骨線維管)を形成します(Moore et al., 2018)
- このトンネル内を長趾屈筋腱および長母趾屈筋腱が滑走し、腱を骨に密着させることで屈曲運動の効率を高めています
- 線維鞘は厚さが一定ではなく、強固な**輪状部(annular part)と薄い十字部(cruciate part)**が交互に配置されています(Netter, 2018)
- 輪状部は趾骨の骨幹部および趾節間関節の掌側面に位置し、腱を強固に保持します
- 十字部は関節部分に位置し、指の屈曲時に伸展性を持つことで関節運動を妨げません
手指との類似性:
- 趾の線維鞘の基本構造は、手指の線維鞘(Vaginae fibrosae digitorum manus)と本質的に同一です(Drake et al., 2019)
- ただし、足趾は手指に比べて可動域が制限されており、線維鞘もやや発達が弱い傾向があります
- 母趾(第1趾)では長母趾屈筋腱のみが通過し、第2-5趾では長趾屈筋腱と短趾屈筋腱が線維鞘内を通過します
腱鞘滑膜との関係
線維鞘の内側には**滑膜性腱鞘(synovial sheath)**が存在し、腱の滑走をさらに円滑にしています(Standring, 2020)。滑膜鞘は閉鎖された二重の膜構造で、腱を取り囲む臓側層と線維鞘の内面を覆う壁側層からなり、その間の狭い腔には滑液が存在します。
臨床的意義
腱鞘炎(Tenosynovitis):
- 趾の線維鞘内で腱と腱鞘の間に炎症が生じる病態です(Canoso et al., 2008)
- 過度の運動、反復動作、外傷などが原因となり、疼痛、腫脹、運動時痛が出現します