肘頭腱内包 Bursa intratendinea olecrani
肘頭腱内包は、上腕三頭筋の停止腱内に存在する滑液包です。この構造は解剖学的に重要であり、上腕三頭筋腱と肘頭との間の摩擦を軽減する役割を担っています(Benjamin et al., 2006)。ただし、その存在は個人差が大きく、必ずしも全ての人に見られるわけではありません(Standring, 2016)。

J0479 (右前腕の筋(深層):背面図)
解剖学的特徴
- 位置:上腕三頭筋の停止腱内に位置し、特に腱が肘頭に付着する直前の部分に存在します(Moore et al., 2018)
- 構造:通常楕円形または円形の小さな腔で、滑液(潤滑液)を含む二重膜構造です(Bianchi and Martinoli, 2007)
- 組織学:内側は滑膜細胞で覆われ、滑液を分泌して潤滑機能を維持しています(Ralphs and Benjamin, 1994)
機能と生体力学
- 機能:腱の動きをスムーズにし、腱と骨の間の摩擦を軽減する役割があります(Theobald et al., 2015)
- 生体力学的意義:肘関節の伸展運動時に上腕三頭筋腱にかかる機械的ストレスを分散させます(O'Driscoll et al., 2001)
- 関節運動への寄与:肘関節の完全伸展時に特に重要とされる機能を果たしています(Spinner and Kaplan, 2004)
臨床的意義
- 腱滑液包炎:過剰な使用や外傷により炎症を起こすことがあり、肘の後方部痛の原因となり得ます(Mosher et al., 2006)
- 石灰化:慢性的な刺激により滑液包内に石灰沈着が生じることがあります(Jacobson et al., 2013)
- 画像診断:MRIでは高信号領域として確認できることがありますが、小さいため通常の検査では見落とされることも多いです(Blankenbaker and De Smet, 2006)
個人差に関しては、解剖学的研究によると約30〜40%の人にのみ明確に識別できる肘頭腱内包が存在するとされています(Chumbley et al., 2016)。この構造は肘関節の動きに関与する可能性がありますが、その正確な機能や臨床的重要性については、さらなる研究が必要とされています(Savoie and Field, 2010)。
参考文献
- Benjamin, M., Toumi, H., Ralphs, J.R., Bydder, G., Best, T.M. and Milz, S., 2006. Journal of Anatomy, 208(4), pp.471-490. — 腱内滑液包の解剖学的構造と機能についての包括的レビュー
- Bianchi, S. and Martinoli, C., 2007. Ultrasound of the Musculoskeletal System. — 超音波による肘関節周囲の滑液包の診断と評価について解説