虫様筋

4つの虫様筋は、長趾屈筋の腱から始まり、第2~5趾基節骨の内側縁に至ります。第1虫様筋は、第2趾向けの腱の内側縁から起こり、一つの筋肉を形成します。一方、第2~4虫様筋は羽状筋で、長趾屈筋腱の対向面から始まります。虫様筋は深横中足靱帯の下側を走り、両者は小さな滑液包で隔てられています。

4つの虫様筋のうち、最も内側の第1虫様筋は内側足底神経から支配され、残りの第2~4虫様筋は外側足底神経の深枝から支配されます。

虫様筋の収縮は、第2~5趾の趾節間関節が長趾屈筋によって曲げられる時に、趾の曲がりを防ぐ役割を果たします。虫様筋は手と同様に足にも4個存在し、手の深趾屈筋に相当する長趾屈筋腱から起始します。

小成(1960)によると、第2虫様筋の欠如は85側中11側に、第3虫様筋の欠如は85側中6側に観察されました。堀口の46側の調査(堀口、未発表)によれば、第1が1側、第2が0側、第3が1側、第4が4側でした。

虫様筋の停止腱は、基節の母趾側を回って同趾の趾背腱膜に加わる場合と、基節骨底に終わる場合が記載されてきました。しかし、Oukouchi et al., (1992)の調査によれば、停止腱はほぼ恒常的に趾背腱膜に加わり、基節骨底には1-2割前後の頻度でしか終わらないことが明らかとなりました(図65)。第1虫様筋の支配はほとんどが第1総底側趾神経(内側足底神経)によるもので、まれに外側足底神経深枝からも枝を受けて二重支配となることがあります。

第2虫様筋の支配は、74側中56側が外側足底神経深枝単独、74側中15側が第2総底側趾神経(内側足底神経)と外側足底神経深枝による二重支配、74側中3側が第2総底側趾神経による単独支配であることが報告されています。第3虫様筋は全例が外側足底神経深枝を受け、64側中4側で第3総底側趾神経(内側足底神経)からも枝を受ける二重支配が見られます。第4虫様筋は外側足底神経深枝のみを受けます。以上は小成(1960)による結果です。

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図65 足の第3指の指背腱膜(右側)(Oukouchi et al., 1992改変)

図65 足の第3指の指背腱膜(右側)

大きな矢印:虫様筋が指背腱膜に停止します。 小さな矢印:虫様筋が基節骨底に停止します。 大きな矢印:骨間筋が基節骨底に停止します。 小さな矢印:骨間筋が指背腱膜に停止します(翼状腱)。 Da:指背腱膜、Dp:末節骨、D3:第3背側骨間筋、Eb:短指仲筋、EI:長指伸筋、L2:第2虫様筋、Lt:長指仲筋の外側停止腱束、Mb:中足骨、Mp:中節骨、Mt:長指伸筋の内側停止腱束、PI:第1底側骨間筋、Pp:基節骨、TI:深横中足靭帯、Wt:翼状腱。

日本人のからだ(堀口正治 2000)によると

足底の筋 (図64)

母趾球筋(母趾外転筋、短母趾屈筋、母趾内転筋)、小趾球筋(小趾外転筋、短小趾屈筋、小趾外転筋)、そして中足筋(短趾屈筋、足底方形筋、虫様筋、底側骨間筋・背側骨間筋)に分けられます。中足筋では、対応する手の中手筋とは異なり、短趾屈筋と足底方形筋が追加で存在します。短趾屈筋は上肢の浅趾屈筋に相当しますが、足底方形筋に相当する上肢の筋は存在しません。また、小趾球筋では、手の短掌筋に相当する筋は存在しません。

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図64 足底の筋を底側からみたところ(右側)

図64 足底の筋を底側からみたところ(右側)