縫工筋

縫工筋

縫工筋は、大腿前面の最も浅い層を上外側から下内側に斜めに横切る長い帯状の筋肉です。上前腸骨棘から放射状に広がり、大腿筋膜に包まれ、膝関節の背側を弓状に横切ります。

その腱は遠位かつ腹側に斜向きに走り、脛骨の内側面と下腿筋膜に止まります。これは鵞足と呼ばれ、縫工筋(浅層)、薄筋および半腱様筋(深層)の腱が一箇所に集まる形状をしています。鵞足は内側側副靭帯から鵞足包で隔てられ、その腱線維は脛骨の内側面に放射し、浅層の線維は下腿筋膜に続きます。縫工筋という名前は、仕立屋が脚を組む際の姿勢から来ています。この筋肉は大腿を屈曲・外転・外旋させ、膝を屈曲する時に働くため、その名前が付けられました。

この筋の外側は伸筋三角と呼ばれ、大腿の伸筋が存在します。一方、内側には屈筋と内転筋が存在します。特に、鼠径靭帯、縫工筋、長内転筋に囲まれる部分は大腿三角と呼ばれ、外側から大腿神経、大腿動脈、大腿静脈がこの順に並んでいます。通常、筋腹は複数の大腿神経前皮枝によって貫かれ、腱は伏在神経によって貫かれることがあります。この筋は稀に欠如したり、縦に二分したりすることがあります。起始は上前腸骨棘で、大腿前面を斜めに下り、大腿骨内側上顆の後を回り、平らな腱となって薄筋および半腱様筋と共に鵞足を形成し、脛骨粗面の後内側に止まります(図54)。

054.png

図54 鵞足を形成して停止する筋

図54 鵞足を形成して停止する筋

内側からみたところ(右側).

Bfl: 大腿二頭筋長頭, Gr: 薄筋, It: 腱板, Pa: 鵞足, Sa: 縫工筋, Sias: 上前腸骨棘, St: 半腱様筋, Ti: 坐骨結節, Tt: 脛骨粗面