中殿筋

日本人のからだ(堀口正治 2000)によると

中殿筋は殿筋群の浅層で第2層を形成します。大部分は大殿筋に覆われていますが、小殿筋全体も覆います。内側部はしばしば梨状筋と連続し、境界が不明瞭になります。中殿筋は腸骨稜と前後の殿筋線に囲まれた腸骨翼領域から起こり、停止腱は大転子の先端外面にあります。中殿筋の線維束は大転子で収束し、外側から見ると三角形に見えます。腹側から来た線維は短い停止腱となり、背側の筋束の上に重なります。中殿筋の転子包(滑液包)は大転子と筋の間に位置し、中殿筋は大腿筋膜に覆われ、大腿筋膜の下面からも起始します。後部は大殿筋前縁部の深層に位置し、腸骨翼外面の前後殿筋線の間の領域、腸骨稜外唇、中殿筋を覆う殿筋筋膜からも起始します。筋束は外側下方へ集束し、大転子の先端から外側部に停止します。後部では上殿神経と上殿動静脈が両者の間を通るため、小殿筋との区分が明確ですが、前部では中殿筋の深層の一部筋束が小殿筋の腱膜に停止するため、外見上は難しいです。しかし、この中殿筋の前側部に位置する筋束は、支配神経の所見により中殿筋の一部であることがわかります。大腿筋膜張筋支配神経はこの筋束と小殿筋との間を走ります(図52) (Akita et al., 1993)。中殿筋は上殿神経により深層から支配され、上殿神経は通常2本あり、頭側部は中・小殿筋の間を走り、中・小殿筋と大腿筋膜張筋に至ります。尾側部は中殿筋の後部のみに至ります(図52) (Akita et al., 1994)。

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図52 上殿神経の起始,走行と分布の模式図(Akita et al., 1994改変)

図52 上殿神経の起始,走行と分布の模式図

A:起始と走行, B:走行と分布。1-3: 上殿神経下枝の枝とその分布, 4:上殿神経上枝の枝とその分布。C:皮枝, Gmed: 中殿筋, Gmin: 小殿筋, Gscr: 上殿神経頭側根, Gscd: 上殿神経尾側根, Gsi: 上殿神経下枝, Gss: 上殿神経上枝。L 4, L 5, S I-3: 腰神経と仙骨神経前枝の番号。P:総腓骨神経, T:脛骨神経, Tn:大腿筋膜張筋。