大殿筋

大殿筋は、最も浅層に存在し、最も大きな殿筋であり、中殿筋・小殿筋の起始の一部を除く大部分を覆うほか、深層の殿筋群全体も覆います。大殿筋は、大腿の伸展における主力となる筋であり、特に歩行時に重要な役割を果たします。中殿筋や小殿筋と同様に、大殿筋も大きな殿部の筋であり、伸筋群に分類されます。

大殿筋は、仙骨と尾骨の辺縁、後殿筋線より後方の腸骨稜、胸腰筋膜、仙結節靭帯などから起始し、厚い筋線維束が斜め下方へ走り、広い停止腱となります。停止腱は近位では大腿筋膜や腸脛靭帯に広がり、遠位では殿筋粗面よりも外側筋間中隔の上に停止します。

大腿筋は、殿筋粗面で他の殿筋との間にあるいくつかの筋間包の上を滑走します。立位では大殿筋下部が坐骨結節を覆い、大腿を屈曲すると大殿筋下部は頭側に移動し、座位では坐骨結節は皮下脂肪上に位置し、触れることが可能です。

殿溝はほぼ水平に走っており、大殿筋が収縮すると深くなりますが、大殿筋の下縁を表しているわけではありません。また、慢性的な刺激により殿部に炎症が起こり、後大腿皮神経を圧迫することがあります。故に、敷物なしに座り仕事をする人々は注意が必要です。

大腿筋の停止腱は、転子包によって大転子と離れています。大殿筋は、腸骨翼の外面で後殿筋線より後の上後腸骨棘を含む部分、仙骨および尾骨の後面で外側縁に近い部分、仙結節靭帯から起始します。

筋束は全体として平行に外側下方へ走り、中・小殿筋や深層の殿筋群を覆い、股関節や大腿骨頚部および大転子などを覆いつつ次第に集束します。上部の筋束と下部浅層の筋束は腸脛靭帯に移行し、下部深層の筋束は大腿骨の殿筋粗面に停止します。大殿筋は下殿神経により支配されます。

日本人のからだ(堀口正治 2000)によると

殿筋群は、大殿筋、中殿筋、小殿筋の三つの筋で構成されています。これらは股関節の動きを支える重要な筋肉で、特に立ち上がる動作や歩行において重要な役割を果たします。大殿筋は股関節の伸展と外旋を、中殿筋は股関節の外転と安定化を、小殿筋は股関節の内旋を担当しています。

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図51 殿筋群を外側からみたところ(右側)

図51 殿筋群を外側からみたところ(右側)

A: 大殿筋と大腿筋膜張筋、B: 中殿筋、C: 小殿筋、Gmax: 大殿筋、Gmed: 中殿筋、Gmin: 小殿筋、T: 腸脛靭帯、Tn: 大腿筋膜張筋、Tm: 大転子