腸腰筋 Musculus iliopsoas

J0237 (右大腿骨、近位端、筋の起こる所と着く所:後内側からの図)

J0240 (右大腿骨と筋の起こる所と着く所:後方からの図)

J0447 (男性の右側の鼡径管の背側壁:背側図)

J0489 (右側の鼡径部の筋を鼡径靱帯の直下で切断した図)

J0495 (右大腿の筋:腹側からの図)

J0497 (右大腿の筋:腹側からの図)

J0728 (男性の前腹壁(下半分):後方からの図)
腸腰筋は、骨盤から大腿骨への力伝達において中心的役割を果たす重要な筋肉です。解剖学的特徴と臨床的意義は以下の通りです(Gray, 2020; Moore et al., 2018):
解剖学的特徴
構成
腸腰筋は3つの筋から構成される複合筋です:
- 大腰筋(musculus psoas major):深部に位置する紡錘形の筋肉で、後腹膜腔の主要な筋です。筋線維は多羽状配列を示し、強力な収縮力を発揮します(Neumann, 2017; Standring, 2021)
- 腸骨筋(musculus iliacus):扇形の筋肉で腸骨窩を覆い、その筋線維は骨盤縁に向かって収束します。大腰筋と合流して共通腱を形成します(Drake et al., 2019)
- 小腰筋(musculus psoas minor):約40-60%の人に存在する変異筋で、存在する場合は大腰筋の前面に位置し、腸恥隆起に停止します。機能的意義は限定的とされています(Tubbs et al., 2016)
起始
- 大腰筋:
- 浅頭:第12胸椎(T12)から第4腰椎(L4)の椎体外側面と椎間円板
- 深頭:全腰椎(L1-L5)の横突起基部および肋骨突起
- 筋束は脊柱の前外側面から起始し、これにより脊柱の安定化に寄与します(Standring, 2021; Bordoni and Varacallo, 2022)
- 腸骨筋:
- 腸骨窩の上部2/3(内面の大部分)
- 前下腸骨棘(AIIS)の基部
- 腸骨稜の内唇
- 仙腸関節の前面(一部の線維)
停止
両筋は骨盤内で合流し、筋裂孔(lacuna musculorum)を通過した後、共通の強靭な腱を形成して大腿骨小転子(lesser trochanter)の内側面に停止します。この共通腱は小転子に付着する前に、腸恥包(bursa iliopectinea)によって股関節包から分離されています(Moore et al., 2018; Tatu et al., 2018)。
走行
- 大腰筋の走行:
- 起始部から下方内側に向かって走行
- 腰椎横突起の間を通過し、腰方形筋の前面を下降
- 骨盤縁(弓状線)で腸骨筋と合流
- 骨盤内では後腹膜腔に位置し、腹膜によって覆われています(Drake et al., 2019)
- 共通部の走行:
- 鼠径靱帯下の筋裂孔を通過(外側区画)
- 大腿三角の底部を斜めに横断
- 大腿骨頸部の前面を通過し、約45度の角度で小転子に到達
- この走行により、股関節屈曲時には効率的なモーメントアームが形成されます(Neumann, 2017)
神経支配
二重神経支配のパターンを示します:
- 大腰筋:腰神経叢の前枝(L1-L3、場合によりL4)から直接分枝する筋枝によって支配されます。これらの神経は筋の後面から進入します(Bordoni and Varacallo, 2022)