手の虫様筋

手のひらと指の間の関節(中手指節関節;MP関節)を曲げます。第4の虫様筋は深指屈筋の腱の橈側からそれぞれ起こり、第2から第5指の指背腱膜に終わる4つの筋で構成されます。第1虫様筋は第2指の深指屈筋腱の橈側、第2虫様筋は第3指の深指屈筋腱の橈側、第3虫様筋と第4虫様筋はそれぞれ第3指と第4指の深指屈筋腱の対向側から起始します。つまり、第3から第5指に向かう深指屈筋腱は虫様筋により結合され、第1虫様筋が停止する第2指の深指屈筋腱は手掌部で独立しています。これは、虫様筋が停止する4つの指の中で第2指の可動性が最も大きいことと関連しています。そのため、深指屈筋が収縮すると虫様筋は緊張します。虫様筋は深横中手靭帯の掌側を遠位方向に走り、対応する指の基節関節の屈曲軸の掌側を通ります。これらの腱は橈側から指背腱膜に入ります。腱の停止部の近位線維は、基節骨の背側面をほぼ横断し、遠位線維は中節骨と末節骨の背側面を斜めに走ります。

日本人のからだ(本間敏彦 2000)によると

起始の変異は、第2虫様筋が最も多く、50例中17例で第2指と第3指の深指屈筋腱の対向側から起始すると報告されています(面高, 1964)。

虫様筋は第2から第5指までの各指の指背腱膜の橈側に停止します。変異としては、二分して隣り合う指背腱膜の尺側と橈側の両方または基節骨底などに停止する例があり、特に第3、第4虫様筋にこれらの変異が多いとされます(14-21%、面高、1964)。4つの虫様筋の中で、第1虫様筋が量的に最も大きく、含まれる筋紡錘の数も多い(安藤、1984; 榎ら、1994)。これは第2指が第3指から第5指までの指より、より高い可動性を持つことに関係しています。

第1から第2虫様筋は正中神経、第3から第4虫様筋は尺骨神経の支配とされています。しかし、両神経の境界部にある第3虫様筋は両神経による二重神経支配が多く、50%以上もあるとする報告があります(町田、1961 c)。二重神経支配の場合、両神経は筋内で交通し、両神経の分布域を分けることは難しいです。